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【食べもの通信】


古くて新しい農業経済の本

35年前に出版された本をそれだけを理由に古いといってもいいのか
自信がありませんが、ともかく今は古本屋さん以外では売っていない
ようなので、古いとします。そして内容は新しい。表現や用語や
データの一部を今のものに置き換えると、先月出版された本だといっ
ても通りそうです。コンピュータ関係の本だと35年前のものはおそらく
本棚の中の記念物(ただし、なにかの具合で参照する場合もある)
ですが、形而上学の分野だと35年前というのは僕のような読者には、
ほとんど現在と同じ、ということになります。ところで、この35年前の
「日本農業の再発見-歴史と風土から」(飯沼二郎著)は農業経済
学と風土論を併せ持ったような内容の本ですが、経済学の分野では、
不況のたびに登場する75年前のケインズの有効需要はいうに及ば
ず、200年ほど前のマルサスの人口論やリカードの比較生産費説も
食糧問題や農業問題が議論される時には今でもしばしば登場するの
で、35年前というのは1ヶ月くらい前の感じかもしれません。

この本は「草をとる、水をまく」というブログ記事のなかでも一部を参
照したものですが、その骨子を再構成すると以下のようになります。

◇ 「農業の近代化・合理化とは、けっきょく、それぞれの国の風土を
生かすことにほかならない」のだが、「単作経営化と大型機械化の
方向は、日本の風土を生かすよりも、むしろ殺すことになる」

◇ 「(灌漑は農業にたいする風土的な条件を大きくかえることになる
ので、灌漑地をのぞいてかんがえると)世界の農業は、乾燥地帯の
農業と湿潤地帯の農業、すなわち保水農業と除草農業に分けられる
が、これを休閑と中耕という別の視点に基づいて、さらに、休閑農業と
中耕農業に区分しなおすこともまたできる」

 註:【休閑】土地を肥やすため、一定期間耕作をやめること。休耕。
〈Kotobank〉
 註:【中耕】農作物の生育中に、その周囲の表土を浅く耕すこと。
土壌の通気性などをよくし、作物の生育を促進させるために行う。
〈Kotobank〉

◇ 「湿潤地のなかでも最も湿潤な東南アジアと東アジアにおいては、
北ヨーロッパのように三年に一度の休閑除草などということではとう
てい雑草を除去することはできない。」「しかし、雑草が繁茂するとい
うことは、同時にまた、作物も繁茂するということでもある。だから、
雑草を除去してやりさえすれば、作物の豊かな収穫を期待することも、
またできるわけである。そこで、東南アジア、東アジアでは、作物の
生育中に、中耕による頻繁な除草がおこなわれる。」つまり、日本は
中耕除草農業。

◇ 「戦後の日本の支配権力にとって、先進国はアメリカであった。
したがってかれら知識人たち、日本農業『近代化』即『アメリカ化』と
かんがえたことは、きわめて当然のなりゆきであったといえよう。アメ
リカ農業の特徴は、大型機械化と単作経営化である。それは、全国
平均77ヘクタールという大農場を、家族の労働力を主体としてまか
なっていこうとするならば、当然のことである。しかし、日本のインテリ
たちは、全国平均1ヘクタールという日本に、そのまま、大型機械化と
単作経営化をもちこもうとした。」

 註:2007年の米国と日本の1戸あたりの農地面積は、それぞれ
181.7ha、1.83haで、米国は日本の99倍、この本で参照されている
データ(1970年前後)だと77倍なので、その差は広がっている。

◇ しかし日本の「中耕(除草)農業は、より湿潤な地帯に発達したた
めに」、米国の「休閑農業のように栽培面積をひろげて労働を粗放化
するよりも、栽培面積をそのままにして労働を集約化したほうが、かえ
って収量が多い。」

◇ 「高度経済成長のはじまる昭和三十五年ごろから、財界グループ
が、
日本農業の『近代化』にたいする提言をさかんに発表しはじめる。」
「これらは、いろいろの内容をふくんでいるが、次の二点に要約する
ことができよう。」

 「(1)ある自給を認めながら、現在の輸入を前提として、財政負担の
かからない食糧自給政策をかんがえる。とくに、米価はあくまで国際
価格に引き下げることを旨とし、それが不可能な場合には、コメを輸入
すること。いわゆる『国際分業』論の主張」
 「(2)零細農家の土地を集中させて積極的に経営規模の拡大を
はかり、大型機械化と単作経営化をすすめることによって、農業労働
の効率を高める。いわゆる『農業近代化」論の主張」

◇ (最初の引用を再び引用すると)「農業の近代化・合理化とは、けっ
きょく、それぞれの国の風土を生かすことにほかならない」のだが、
「単作経営化と大型機械化の方向は、日本の風土を生かすよりも、
むしろ殺すことになる」

選択と集中というのは考え方としては目新しいものではありません。
得意な分野に経営資源を集中してビジネス場裡(じょうり)で生き残る
という古典的なビジネス戦略の一つが新しい衣装をまとったものです。
この選択と集中という考え方をもっと大きく国のレベルで適用し、農業を
含む国の産業の全体から、より重要な産業分野を選択しそれに集中
することも可能です。

お隣の国の韓国は、最近はハイテク家電や半導体、自動車や先端素
材などで世界の市場シェアを急速に高めています。ただ、韓国の穀物
自給率は27~28%で日本と同じくらい低い水準にあり(OECDおよび
人口が1億人以上の国37カ国の中での順位は、日本と韓国が33位と3
4位を争っている)、また農畜産物の平均関税も日本の12%(ただし、
コメを除いた場合)に対して62%と高いようです。つまり、韓国は世界
の中では、日本と同じくらい農畜産業の生産コストが高いと想定されま
す。(註:農林水産省の2007年試算では、韓国の穀物自給率は30%、
日本のそれは28%)

その韓国が、農畜産物の輸出競争力の非常に強い米国と2007年4月
に、FTA (Free Trade Agreement) の政府間合意に達しましたが、どう
いう背景でそうなったのかが気になります(現在は、大統領はそれぞれ
変わったが、両国とも議会の批准待ちの状態)。韓国は日本よりもはる
かに経済の対外依存度・貿易依存度が高く、いくぶん古い教科書風
表現を使えば製造業中心のとんがった「加工貿易国」なので、この
韓米FTAという方向は、国の将来を製造業(工業)に託して農業を捨て
た・犠牲にしたということだと解釈できそうです。「国際分業論」「比較
生産費説」の極端な形での採用ともいえます。

ただし、農業を犠牲にしたということは、国民のために食糧を確保する
ということを諦めたということには当然のことながらならないので、FTA
で米国から農畜産物を無税で優先的に輸入すると同時に、マダガスカ
ルでは乱暴過ぎてその目論見がはずれたようですがLand Grabbing
(海外の農地買収)といったそれなりに強引な手段で手に入れた国外
の農地で生産される、いわば紐付き外国農産物を自国のために確保
するというのが今後の方策かもしれません。

さて、「日本農業の再発見-歴史と風土から」で採りあげられていた
議論は、基本的にはそのままの形で、ただし新しい衣装をまとって今も
続いています。「風土」の一部は「農業の多面的機能」という形で再評
価され、「風土」の別の側面である「栽培面積をそのままにして労働を
集約化したほうが、かえって収量が多い『中耕除草農業』」は、その考
えがそのまま反映された結果かどうかは別にして小規模な(中耕除草)
農家にも政府の財政支援が広がりました。そして同時に「国際分業論」
や「単作経営化」「大型機械化」を支持する人たちも相変わらず元気な
様子です。

たいていの経済学の教科書には合成の誤謬というものが出てきます。
ミクロ、つまり個々の消費者や企業にとって正しいことが、マクロ、つま
り国の単位では不都合を生むといった事態をさします。不況で消費者が
消費を少なくし企業が投資(別言すれば、企業の消費)を抑制すると消
費者の家計や企業の財務は安定しますが、みんながモノやサービスを
買わないので、国のレベルでは国民所得の維持のために必要な有効
需要が不足しその結果不況が悪化します。したがって、有効需要を作り
出すためには国がたとえば各種の公共事業などにお金を使うことにな
ります。

農業もこれに似たようなところがあり、個々の農家や農業法人にとって
は正しいことが、農業全体にとっては不都合を生じさせる場合がありま
す。

個別の農業ビジネスでは選択と集中は適切な戦略ですが、それを寄せ
集めても全体ではいびつな形の農業になる危険性があります。つまり、
ある農家が付加価値の高いトマト栽培や特定の野菜栽培に集中する
ことは目標とした利潤が生み出されている限りにおいてはその農家の
ビジネスにとっては正しい選択肢ですが、農業全体での国民の食料
供給という観点から、米や麦や基本野菜のような基礎農産物と高級
野菜や果樹のような付加価値農産物とのマクロなバランスを考えると、
別の視点も必要です。

これを国境をまたいで考えると、WTOのタテマエの議論とは別に、米国
もECも見えざる手ではないですが、「外部にはどうもよく見えない手」の
ような形で自国・自領域の農業ビジネスを継続して金銭的に支援してい
て、そういう事情は必ずしもわかりやすい形では伝わってこないので、
大きな力を持った農産物輸出国の主張する「国際分業」という言葉には
用心深く耳を傾けることにしています。


(夏 2010)



農業保護率指標について

交渉を有利に進める重要な要素のひとつがルール作りですが、国際
交渉の場合、自国に都合のよいルールを設定できたら、なかば勝った
ようなものです。僕たちに身近なところではスポーツの世界でそういう
ことがしばしば起こりますし、ITの世界でよく見られるデファクト・
スタンダード(シェアの大きさによる実質的な標準化)も、いわば、その
親類です。

多くの人にとって心地よい表層の動きの底で別の実利的な活動が
進行することがよくあります。あるいは別の実利的な活動を推進する
ための手段として表層のもっともらしい動きを作り出しているのかもし
れません。たとえば、温暖化抑制・二酸化炭素削減、クリーンなエネ
ルギーという動きの底に原子力発電ビジネス関連の利害が当初から
潜んでいたり、核兵器縮減という大向こうをうならす演説やそれに関
連した動きや交渉の実質的な狙いが、核超大国への核兵器の集中
(これを現代版の「刀狩り」と呼んでもいいと思いますが)と古くなった
不良核兵器在庫の処分であったりします。

農業保護率(PSE%: Agricultural Producer Support Estimate %、そのま
ま訳せば農産物生産者への支援評価額の比率)というOECDの指標が
あります。PSEは「農産物の関税や管理価格によってできる内外の農
産物価格差に生産量を乗じたもの」と「政府の補助金等の財政支持額」
を「合計」したもので、PSE%はその国のPSEをその国の農業総生産額で
割ったものです。こういう指標ができた背景は、PSE%の定義に現われ
ていますが、内外の農産物価格差等は、消費者や納税者が農産物
生産者に対して余分に払っている値段なので、少ない方がよいという
ものです。そしてそこからはそういう方向の国際政治圧力が普通は生
まれます。

OECD FACTBOOK 2009によれば、2007年のPSE%は、低い国だとオ
ーストラリアが5.5%で米国が9.9%、高い国はノルウェイが53.3%でスイス
が49.8%、韓国が59.8%で日本が45.5%、まん中くらいの国(と地域)は
カナダやEUで、カナダが15.4%でEU27ヶ国平均が25.7%。OECD平均は
22.5%。ちなみにOECDに属していない中国は8.6%、ブラジルが5.0%。

つまり、農産物輸出国の農業保護率は低く、農産物輸入国の農業
保護率は高いという関係になっています。農産物輸入国ということは、
農産物輸入が農産物輸出よりも多くて消費農産物の無視できない割
合を輸入にたよっているということなので、別の言葉を使えば食料
自給率や穀物自給率の低い国ということになります。対象が食べもの
という生活に直結する農産物なのでそういう相関関係でいいと僕は
思っていますが、農産物輸出国であるEUの比率が妙に高いのが気に
なりますし、それ以外の国の中にも、政府の補助金等の財政支持額が
意識的に複雑な制度の運用で透明でない国もあり、そういう国では
PSE% が実態よりも低くなっているようです。

それから、僕は日本の45.5%という数字が高く出すぎているのではな
いかと思っています。日本の場合、農産物の「関税や管理価格によっ
てできる内外価格差」(ある農産物の国内価格と、それと同等あるいは
同質的な外国の農産物の価格との差)がPSE%の90%を占めるとされて
いますが、内外価格差は別に関税や管理価格だけでできるわけでは
ありません。それ以外の要因も働きます。

無農薬栽培の農産物はそうでない(慣行栽培の)農産物より高いのは
あたりまえだし、おいしい野菜は普通の味の野菜より値段が高いのも
あたりまえ、魚沼産のコシヒカリが一般のその他の地域の一般国内米
よりも高いのも当然と認識されています。この価格差を付加価値に対
するプレミアム価格といいますが、そういうものを好む消費者は躊躇
なく追加分の価格(プレミアム価格)を支払います。それと同じことが
国産農産物と輸入農産物にも当てはまります。

味がよく安全・安心な国産農産物に対して50%や100%のプレミアム価
格を支払う消費者は珍しくありません。100円の輸入品に対して150円
~200円の国産農産物、250円の輸入品に対して375円~500円の国
内物。しかし、すべての国産農産物がそういうものでもないし、また
すべての日本の消費者がそういう消費行動をとるわけでもありません。
ここでは、控えめな数字を援用します。

「福岡市民の食生活に関するアンケート」(福岡都市科学研究所、
2003年)における「農産物消費者の4分類」を付加価値に対してお金
を払うかどうかという切り口で2分すると、

【農産物の付加価値に対してお金を払う層】
【A】 農業の価値がわかり、その付加価値に対してお金を支払う
消費者層
【B】 食の安全性に強い関心を持ち、安全性に対してお金を支払う
消費者層

【農産物の付加価値にはお金を払わない層】
【C】食べ物に関する意識と行動が分離している消費者層、あるいは
実際には価格以外は無関心な消費者層(アンケート調査などでは
「食の安全が一番」「地産地消が大切」と答えるが、実際の消費行動
ではスーパーの外国産特売品に飛びつく層)
【D】食に対してまったく無関心な消費者層

となり【A】と【B】の比率がそれぞれ5.4%と16.5%で合計21.9%なの
で、21.9%の消費者は、農産物の付加価値によってできた内外価格
差には喜んでお金を払う、つまりこの価格差は関税や管理価格とは
無関係と考えると、45.5%の90%(内外価格差影響分)である40.95%
を21.9%分割り引いて考えた方が適正数字だとことになります。
40.95%*0.219は8.97%、それを45.5%から引くと36.5%。9ポイント分、
日本の農業保護率は低くなり、それなりにEUに接近します。OECDは
こういうパラメーターも国別に取り入れたらどうかと思いますが、統計
に恣意が働く世界でもあるので難しいかもしれません。

(晩春 2010)



世界の穀物需給(2009~10年)と日本

世界の食料需給状況を農林水産省は定期的にまとめていますが、
「海外食料需給レポート2009」という年間レポートが先日ホームペー
ジに掲載されました。

「海外食料需給レポート2009」は、2009/10 年度の穀物等の国際
需給の動向を、米国農務省(USDA)や国連食料農業機関(FAO)など
のデータを援用しながら、分析したものですが、農水省自身が「『海
外食料需給レポート2009』のポイント」と題してその内容を箇条書き
でまとめているのでそれを以下に引用します。(『・・』の部分。なお、
その中の《・・》は僕の補足。)

『2009/10年度の世界の穀物等の需給は、穀物、油糧種子ともに
生産量が消費量を上回り、期末在庫量が増加。

小麦: 生産量は、昨年を下回るものの2年連続で消費量を上回り、
需給は緩和。

とうもろこし: 主産国の米国では史上最高の単収、生産量。一方、
バイオエタノール原料用等《「等」とは、家畜飼料用》の需要の増加
により需給は引き締まる。

米: インドの干ばつやフィリピンの台風による減産《と、中国の需
要増》から需給は引き締まる。

大豆: 米国、アルゼンチン、ブラジルともに生育期の好天のため、
史上最高の生産量となり、需給は緩和。』

食べものとしての穀物は、「食料の南北問題」を別にすれば、米
(コメ)を除き、その需給が緩和(生産量が消費量を上回る)してい
ます。短期的な穀物不足はまずなさそうです。

下のグラフは、同レポートから引用した穀物の国際価格の推移です
が、2009年~2010年の穀物需給状況と重ね合わせると次のようにな
ります。

1.小麦や大豆の価格は、2008年の暴騰後、2006年価格の1.5倍
程度にまで安定してきたが、今後の1年は、その水準かそれよりも
すこし安いレベルで推移。

2.米(コメ)の価格も、2008年の暴騰後落ち着いてきたが、2006年
価格の2倍くらいの位置で高止まりしている。米は需給がすこしタイト
なので、今後の価格位置はその水準かすこし高いレベルで推移。



短期的には一部を除いて穀物は豊富と予想される状況ですが、日本
の農業や穀物自給率・食料自給率に対してどんな意味合いを持つの
か。

◇全般的な穀物需給が緩和した(すこし穀物余りの状態になった)か
らといって、あたりまえのことですが、日本の穀物自給率や食料自給
率が上向くわけではありません。

◇日本のコメの国際競争力は、国際コメ価格の上昇により以前よりも
相対的に高まリましたが、その状態を維持できそうです。これは、将
来の良食味ジャポニカ米を近郊国へ輸出することを視野に入れた場
合、有利な環境条件です。

◇2020年度に食料自給率50%をめざす手段のひとつが、農林水産省
案では、米粉を使ったパンなどの米粉加工食品や家畜用飼料米と
いったコメの新しい用途を拡大することで、もうひとつが小麦や大豆の
自給率の向上です(それぞれ13~14%を34%に、5~6%を17%に)。

◇米粉重視の方向を個々の現場でしっかり維持していないと、外国
産小麦の安さが、米粉利用の速度を落とす危険性はあります。

◇家畜用飼料米の場合は、相手はトウモロコシですが、同様の危険
性があります。

◇北海道産小麦は国産小麦生産量の60%を占めていますが、2009
年度は北海道産小麦の収穫量が夏の長雨などの天候不順で予定
の70%という状態で、とくにパン用のキタノカオリやハルユタカの収穫
量は予定の30~40%。出荷は企業限定で、北海道小麦粉の好きな
個人がそれらを買おうと思っても品薄で買えない様子。小麦の自給率
上昇という点では、ボディーブロー風のじわっとした悪影響がありそう
です。

試験勉強を、しかたなく試験の直前に開始するか、それとも準備時間
に余裕を持って前もってとりかかるか、試験ベンキョーなんてしても意
味がないのでぶっつけ本番という3つのタイプがありますが、穀物に
関しては各国とも時間の余裕を持って取り組んでいるようです。それ
に、企業や個人事業者の投資・投機欲求がからむと年毎に、工業製
品以上の速度で、作付品目や生産量が変化するので、そうしたことの
結果、現在は穀物需給が緩和しているのかもしれません。なかには
Land Grabbing なる「海外投資」に熱心な国も見られます。

(春 2010)



基礎農産物と付加価値農産物

企業や事業の収益性を判断する一般的な指標に売上と利益とその
比率があります。利益には、売上高から(仕入)原価を引いた粗利益
や、粗利益と似ていますが損益分岐点分析に使われる限界利益、
営業利益や経常利益、そしてPER(株価収益率)などにも使われる
純利益があります。

農産物には、穀類や豆類、野菜や果物、そして花卉(かき:花)と
さまざまなものがありますが、一定の農耕地面積当たり、それが
露地であれハウスであれ、どんな農産物がどれほどの売上と利益
を生むかがその農産物の収益性指標になります。

通常、そうした分析の農耕地面積単位として「10a」(10アール:
1000㎡:縦と横が約32メールずつの四角形)が使われますが、10a
あたり、どれくらいの収量(収穫量、通常kgで表示)があり、1kgあた
りの価格(出荷単価)がわかれば粗収益、つまり売上が計算でき
ますし、直接費と呼ばれる材料費を中心とした変動費を引けば、所得、
つまり限界利益が求められます。(直接費には、種苗費や肥料・農薬
費、生産資材の費用などが含まれますが、農耕機械やハウスの
減価償却費、流通経費や自己労務費などは含まれません。)

対象農作物として以下のものを選びそれぞれの収益性を比べたい
と思いますが、農作物の食べものとしての性格から「穀類」・「豆類」・
「イモ類」を主食系の「基礎農産物」、そしていわゆる「野菜」を
非主食系の「付加価値農産物」と名づけます。(ただし、数値は
北海道の平均値で、ソースは「北海道農業入門」平成15年など)

【穀類】米、小麦
【豆類】大豆、小豆
【イモ類】じゃがいも
【野菜】トマト、ピーマン、メロン、かぼちゃ、いちご、スイートコーン、
たまねぎ、ねぎ、白菜、キャベツ、アスパラガス、大根、にんじん

「所得」(粗収益から直接費を引いたもの)の「ベスト6」は、

(1)トマト(2)いちご(3)ピーマン(4)メロン(5)ねぎ(6)アスパラガス

で、すべて非主食系の「付加価値農作物」ですが、「所得」の
「ワースト6」は、

(1)大豆(2)米(3)小麦(4)にんじん(5)小豆(6)じゃがいも

で、にんじんを除き、主食系の「基礎農産物」です。

つまり、僕たちが「おなかがすいた」というときに直接役に立つ米や麦
といった「基礎農産物」は儲けの少ない商品で、「おなかがすいた」と
いう状態が満たされたあとに欲しくなる「もっとおいしいもの、より健康
に役立つもの」、つまりトマトやいちごやメロンやねぎなどの「付加価値
農産物」が儲かる商品ということになります。だから、野菜や果物や
花卉(かき:観賞用の花)のような利益率が高く少ない面積で始めら
れるものが新規就農者向けの農産物とされているわけです。

これが、農業以外の産業一般であれば、電気やガスを除いて、儲けの
少ないものは消費者が付加価値を認めていないのだから市場原理で
自然淘汰されていけばそれはそれでよい、ということにもなるかもしれ
ませんが、農産物やその他の基本食材の場合はそうはいきません。
比較生産費説などを持ち出して日本に農業は不要とする意見もまだ
あるかもしれませんし、農家は儲けの多い「付加価値農産物」に集中
すればそれでよしとする意見もありそうです。

僕は、基礎農産物と付加価値農産物のバランスの維持が重要だと
考えていますが、穀物自給率や食料自給率といったパラメーターは
そうした両者のマクロなバランスをチェックするのにも役立ちそうです。

(春 2010)



『2020年度に50%』

食料自給率と穀物自給率は、より正確を期すと、「ヒトの食料自給率」
と「ヒトと家畜の穀物自給率」は、「ヒトと家畜の穀物自給率」が高まれ
ば、家畜の肉(牛肉・豚肉・鶏肉)と卵の国内自給率が高まるので、
「ヒトの食料自給率」が高まるという関係において、相互に関連してい
ます。ヒトと家畜の主食は、米や小麦やとうもろこしや大豆で(牛や鶏
は牧草や雑草も食べますが)、それらをお互いに分け合って食べなが
ら、人は同時に家畜そのもの(肉)や家畜の産出物(卵や牛乳)を食べ
るという構図が続く限りは、「ヒトの食料自給率」は「ヒトと家畜の穀物
自給率」に依存します。(「ヒト」とは日本で暮らしている日本人のこと
です。)

蛇足的な説明ですが、僕たち日本人の食べものが熱量基準でどれほ
ど自給できているかという割合を示すのが「カロリーベースの食料自
給率」というパラメータです。「ああ、おなかがすいた」とか「腹が減っ
て動けない」とか、「朝から何も食べていないので飢え死にしそうだ」
とかそういう僕たちの素朴な(あるいは基本的な)食べものに対する
欲求を測るには他(たとえば、生産額で測った食料自給率)よりも適し
たパラメータだと思います。また、ある国に住んでいる人間および家畜
の食べる穀物が、その国でどれほど自給されているかを表すのが
(家畜用飼料を含む)穀物自給率です。

カロリーベースの食料自給率は、この数十年でとても欧米化され、冷
蔵庫に不要食材や不要食品のあふれているような場面を含む日本の
食料事情の総体を見るためには、結果としては、よく考えられた指標
だと僕は考えており、穀物自給率と食料自給率の2つの指標を同時に
見ることによって、僕たちは日本の食の状況をより客観的に把握でき
ると思われます。


さて、先週、農林水産省が、2020年度の食料自給率目標を発表しまし
たが(農水省ホームページ)、カロリーベースで50%と、現行計画の45%
を上回る意欲的な数値目標となっています。ただ、今回の資料では、
2020年度の50%が、21世紀前半のどこかの時点で食料自給率60%を
実現することを予定していて50%はその通過点なのか、それとも、50%
が達成できたらひとまず満足で60%という次の目標は考慮の外側なの
かがよく見えません。60%という地点から眺めた50%は、50%をゴールと
する場合と違って、食生活や農耕地面積に関して相当にドラスティック
な枠組みを設定した上での途中経過だからです。

食べもの通信の以前の記事「食料自給率50%と60%の風景」は、
カロリーベースの食料自給率を高めるための選択肢を、おおまかで
おおざっぱですが、意識的に大きくした振り幅のなかで考えたもので
す。選択肢を大きな振り幅で前もって想像しておくと、それより温和な
提案が出てきたときには、その「現実的な解」の指向性や「現実的な
解」のもとになっている考え方が理解しやすくなります。

振り幅の大きな選択肢とは要は以下のようなものです。

選択肢A.「ヒトの食事内容」を1965年当時に戻すと、当時の食料自
給率は73%だったので、ちょっとした振れがあっても自給率70%が達
成できる。しかし、そこまでの距離はさすがに遠いので、肉の摂取量
を現在のレベルから35%減らし、コメを食べる量を今よりも50%増やせ
ば、食料自給率60%は達成できそうである。

選択肢B.(「ヒトの食事内容」は変えないで、つまり反論が多そうだ
からそれには手をつけないで)「家畜の食べもの(飼料)」を考える。
家畜の食べもの(飼料)を輸入から国内生産に「すべて」切り替えると
どう自給率上昇に貢献するか。そうすれば食料自給率50%は達成でき
るが、このためには農耕地面積を今の1.9倍以上にしないといけない
のでこれはほぼ不可能である。では次に、選択と集中方式で、家畜
用(濃厚)飼料でいちばん消費量の多いトウモロコシをコメ(飼料用米)
で代替したらどうなるか。農耕地拡大に関して頑張れば、つまり
1960年代後半の農耕地面積まで耕地を増やせたら飼料米供給は
何とかなるかもしれないが、その結果は食料自給率が45%であり、
効果は高くない。

農林水産省の「2020年で50%」に戻ります。2020年で食料自給率
50%というビジョンを支える戦略というか、戦略の方向は、「生産面」
と「消費面」の両面から考察されています。「小麦の二毛作の飛躍的
拡大、未利用地の米粉用米・飼料用米、大豆等の作付の拡大のほか、
技術の開発普及、農地の確保等を推進」という「生産面」については、
それが実現できるだろうという前提で話を進めます。(数字の変化は、
2008年度実績から2020年度目標への12年間の変化です。)

(1) コメを増産し、人間にも家畜にも、もっとコメを食べてもらう。
    (ヒトの食べものに使う米粉用のコメを現在の1万トンから50万
    トンに増産。同時に、家畜飼料用のコメを1万トンから70万トン
    に増産。)

(2) コメ以外に、日本人の好きな各種食べものに使われる(穀類の)
    小麦と(豆類の)大豆を大幅増産する。(小麦は88万トンから
    180万トンへと倍増。大豆も26万トンから60万トンに2.3倍増。)

(3) 家畜用の飼料のうち、粗飼料と呼ばれるもの(乾草や牧草や稲
    ワラなど)の割合を増やしながら、粗飼料の自給率を100%にす
    る。(435万トンから527万トンに増産。)

上記をもっと細かく僕の方言も交えて敷衍(ふえん)すると、それぞれ
以下のようになります。(なお、それぞれの増産がどれくらい食料自給
率を上昇させるのか、その貢献度を簡単に計算してみましたが、現在
の食べもの消費パターンを前提にした計算です。)

(1) まずコメについてです。コメの生産量は2008年度が882万トンで
2020年が975万トン、12年間で93万トン、10.5%の増産です。93万トン
の増加分は米粉用米の増産と飼料用米の増産の結果です。(明示され
ていませんが、93万トンとは両者の合計から主食米のわずかな減少分
を引いたものだと思われます。)

目標説明の中に、「朝ごはんをきちんと食べましょう」(原文は『1700万
人の朝食欠食の改善』)、「脂っぽい食事は控えましょう」(原文は『脂
質の摂取抑制』)という表現は見られますが、「肉を減らせ、コメを食え、
とくに子育ての終わった中年以上にはそうしていただきたい」といった
基本的な(それゆえ、最も影響力の大きい)食事内容の変更は、外野
から大きな騒音が出ないように配慮したためか、提案されていません。

米粉用米を増産するとは、ヒトには、米粉という食材がうまく使われた
レシピを通してお米をもっと食べてもらう。米粉の入ったパンや米粉が
主体のパン、米粉の入ったグラタンとか米粉の入ったスパゲティーとか、
今までは小麦粉が主人公だった日常食材に米粉を取り入れた新しい
味と食感のパンやパスタを通してコメの需要と消費を高めてもらうという
ことです。最近は、米粉の代わりに炊いたご飯をホームベーカリーで混
ぜ合わせる種類の小麦粉パンも登場しています。あんパンやカレー
パンなど日本風にローカライズされたパンが好きな日本人なので、新し
い種類のパンも味さえよければ簡単に消化してしまいそうな気もして
います。米粉が年間50万トンレベルまでうまく利用されたら、食料自給
率は1.3~1.4ポイント(%)上昇します。

農耕地面積は461万haから461万haなので、農耕地そのものの拡大
は考えずに、休耕地の再利用や、二毛作・裏作(コメと麦、コメと大豆
など)等の既存農耕地の有効活用によって耕地利用率を92%から
108%まで高めた結果の増産を計画しているようです。(これも生産面
の話なので、ここでは実現が可能ということにしておきます。)


(2) よく指摘されることですが、現在の小麦の自給率は13~14%と低く、
大豆の自給率はもっと低くて5~6%という水準です。

小麦は、種類(強力粉、中力粉、薄力粉)によって用途が違いますが、
ひとくくりにすると、パン、ラーメンやパスタ、うどんやそうめん、そして
女性の好きなケーキなどに使われるので、国内自給率が高ければ、
そのまま食料自給率も高くなります。

大豆は、植物油に大量に使われていますが、伝統の味という点では
小麦よりもはるかに日本人には重要な穀物で、これがないと豆腐も
味噌・醤油も納豆もお手上げです。遺伝子組み換え大豆が蔓延して
いる状況で、そうでない普通の国産大豆の割合が増えることは素直
に喜ばしいことです。

小麦が88万トンから180万トンへと倍増し、大豆も26万トンから60万
トンに2.3倍増すれば、小麦の自給率は13~14%から28~29%へと上昇、
大豆のそれは5~6%から14~15%へと上昇します。両方をあわせると、
食料自給率は2.8~2.9%くらい上昇します。(小麦の貢献度が1.8~1.9%、
大豆が1%)

この結果、コメの増産計画も組み込んで穀物自給率を計算してみると、
現在の27~28%から33~34%に上昇しますが、「OECD諸国等37カ国の
穀物自給率」(2003年)と比べてみると、順位はあいかわらず最後の
方です。穀物自給率が100%を超えている国の数が11カ国、95%以上
の国が16カ国という状況なので、日本は2003年当時で34番目で、
他国の穀物自給率に変化がなければ、2020年の数字でも33番目と
いうことになります。(ついでに、豆類の大豆まで入れて拡大穀物
(「穀物+豆類」)自給率を計算してみましたが、これは30~31%という
低い水準です。)

(3) 家畜用の飼料は、乾草や牧草や稲ワラなどの粗飼料と呼ばれ
るものと、トウモロコシや大麦やコメや大豆油粕(かす)のような濃厚
飼料と呼ばれるものがあり、その割合は濃厚飼料が78%で、濃厚飼
料の90%は輸入されています。22%を占める粗飼料の自給率は80%で
すが、家畜にとってもケンコー食品である粗飼料の割合を増やしなが
ら同時に粗飼料自給率を100%にするという方向なので、その結果、
家畜用飼料の自給率は25%から38%へと上昇します。この上昇によっ
て、食料自給率は1.2~1.3ポイント(%)改善します。

食料自給率の上昇と戦略(方向)との関係をここで整理すると、

* 米粉(の増産と消費)による効果が、1.3~1.4%
* 小麦と大豆(の増産と消費)による効果が、2.8~2.9%
* 家畜飼料(の増産と消費)による効果が、1.2~1.3%
* 合計で5.3~5.6%

となり、現在を40%とすると、食料自給率は45.3~45.6%、41%としても
46.3~46.6%にとどまります。従って50%をめざすには、「余計なお世話」
の領域に踏み込む必要がありそうです。「余計なお世話」の領域に
踏み込むとは、温和な書き方をすると、以下(『・・』)のようなことです。
(『・・』は農林水産省の「食料自給率目標」の「消費面」についての
記述をそのまま引用)

『消費面は、1700万人の朝食欠食の改善、脂質の摂取抑制、国産
小麦・米粉・大豆等の潜在的需要の掘り起こし等を進め、国産農産
物が選択される環境の形成を推進』

こうした方向に異論はないので、また僕の方言を交えて上記の引用
部分を敷衍してみると次のようになると思われます。

とても直截的で簡明な解釈をすると、骨子は「肉を減らせ、もっとコメを
食え、とくに子育ての終わった中年以上にはそうしてもらいたい」と
いうことですが(中年以上云々は勇み足かもしれませんので、それは
さておき)、朝ごはんに関して少し饒舌な解釈をすると、「朝ごはんを
食べていない人が1700万人もいるのでその人たちにできるだけご飯
(おコメ)中心の和風朝ごはんを食べていただきたい。パンが好みの
方は、米粉入りのパンを選択するようお願いしたい。自分で朝ごはん
を準備する時間がないので外食をする方たちにはできるだけ和風
朝ごはん定食を食べてもらいたい。和定食といってもおかずはまず
ほとんどが輸入物だが、ご飯は国産なのでその分だけは自給率
が高まる。ファーストフード店でハンバーガーセットなどの小麦と肉と
油脂が中心になるものはできるだけ控えてもらいたい。」となります。
そして「朝ごはんに限らず、食事メニューから肉やから揚げやフライ
などの脂っぽいものを減らして、パンもできるだけ米粉パン、米粉の
混じったパンを食べるようにしてください。」と「余計なお世話」は続く
のでしょう。

いろいろとモノの本を調べてみると、各家庭の冷蔵庫には廃棄処分を
待つだけの食材や加工食品がたくさん眠っているようです。料理関係
のテレビ番組で一般家庭の冷蔵庫の扉を開けて中を確かめるという
瞬間がありますが、冷蔵庫の中は「モノの本」の記述とほとんど一致
します。つまり、不良在庫のヤマとは言わないまでも、それなりの量の
不良在庫が冷蔵庫の中でゴミ収集日を待っています。

大きな穴を掘り、またそこを掘り返した土で埋めるという作業も、それ
が誰かが発注し、他の誰かが請け負う経済行為なら、経済を成長させ
GDPを増大させます。同様に、食べない食材や食品を冷蔵庫で腐らせ
るという行為も経済を成長させGDPを増大させますが、食料自給率と
いう観点では、冷蔵庫の不良在庫がなくなればそれだけ食料自給率
が改善します。同様に、たとえば賞味時間切れで毎日廃棄処分に
なっているコンビニ弁当の数が少なくなれば、その分食料自給率は
改善します。

現在の食料自給率40~41%を50%にするということは、コメや小麦や大
豆や家畜飼料の生産面での拡大とそれにともなう需要・消費の創出
だけではどうも不十分で、僕たちの食事内容まで立ち入らないと難し
いかもしれません。

同時に、「1700万人の朝ごはん」ではありませんが、この全国的な波
をうまく捉える北海道の加工食品が出てこないかなと期待しています。

(春 2010)




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土地と土


工業では土地は建物や機械と同じで有形固定資産です。違いは減価
償却がないことくらい。不動産投資(投機)目的の場合を除き、土地は
通常は工場や事務所家屋のある地面という以上の意味は持ちません。

農業では、土地は二通りの意味を持ちます。ひとつは「固定資産としての
土地」という意味であり、もうひとつは「土、土壌としての土地」という意味
です。両方の意味が組み合わさって、農作物の生産装置・生産基盤と
しての土地、つまり農地という意味になりますが、土地に土・土壌としての
力がない場合には、その土地はただののっぺらぼうの広がりで、農地と
しての実質的な意味を失います。だから、無農薬・有機栽培に限った話
ではありませんが、「土作り」という作業が大きな意味を持ってきます。

土作りを、有機物の循環のなかで実施するか、無肥料という視座で実施
するか、化学肥料を使って短期的な結果を求めるかは今は別にして、
土作りとは土に農作物が育つパワーを与えることです。土・土壌は作物を
作り続けると農産物育成パワーが「減耗」してきます。土作りとは、いわば、
土に対して投資活動を繰り返すことで土壌品質を維持・改良することなの
で、農地の固定資産税評価額(従って、固定資産税額)が宅地と比べると
非常に低くなっているのは、「土壌品質の維持・改良を前提にする限り」は、
当然だと思います。一方、固定資産としての土地は、その広がりや大きさ
やつながりや形状によって、農産物栽培の作業効率や生産効率に関係
してきます。

よく、日本の農業の生産性はとても低いといわれていますが、農業のどの
部分の生産性がそれほど低いのか、気になります。そこで、農業の生産
性といわれるものを、「土・土壌としての土地の生産性」と「固定資産として
の土地の生産性」に分けて米国や中国、フランスやドイツと比較してみる
とどういうことになるでしょうか。そのために以下のような指標あるいは
代替指標を使いたいと思います。

上述の各国で、単位耕地面積(ここでは1ヘクタール<ha>)あたりどれくら
いの穀類(コメ・小麦・大麦・その他の麦・トウモロコシ・ジャガイモ・その
他のイモ類・大豆・落花生)が生産されているのかを、「土・土壌としての
土地の生産性」の指標とします。肥沃な土地は、そうでない土地よりも
より多くの穀類を育てるからです。「農地生産性」の国別比較です。

「固定資産としての土地の生産性」を図る指標として、農林水産業従事者
一人あたりの穀類生産高を使います。代替的・間接的な指標ですが、
「固定資産としての土地は、その広がりや大きさやつながりや形状に
よって、農産物栽培の作業効率や生産効率に関係してくる」と考えると、
効率のいい形状の土地は、そうでない土地よりも労働投入量が少なくて
すむからです。「労働生産性」の国別比較です。(農業従事者数ではなく、
農林水産業従事者数を使ったのは、データ入手の都合からです。比較
結果がゆがむ可能性は非常に少ないと思います。)

以下は、FAO(国連食糧農業機構)のデータを組み合わせたものです。



農地生産性、つまり農地がどれくらい手入れされていて肥沃か、という点
では、ドイツが妙に頑張っていますが、びっくりするような差はありません。
日本の農地は肥沃で、「土・土壌としての土地」の生産性は高いといえま
す。差といっても15~30%の差です。

一方、労働生産性、つまり、より少ない労働投入量で同じ(あるいはより
多い)生産高をあげているかという点では、ドイツやフランスや米国の
平らな広がりの土地とは違い、狭くて山の多い日本の農地の形状と、
個別の農地の広がり具合や大きさや形状やつながりが「固定資産として
の土地」の生産性を低くしているようです。こちらの差は%の差ではなく、
中国を別にすれば大きな倍数の差になっています。

「土・土壌としての土地」で生産性を伸ばすための糊代(のりしろ)は
ほとんど残っていないのかもしれませんが、「固定資産としての土地」で
生産性を引き上げるための糊代はまだそれなりに余っているようです。

(初春 2010)




食料自給率50%と60%の風景


基本理念がよく見えない政策や基本戦略のよく見えない戦術の連鎖
に対しては、「理念が明確でない、方策が行きあたりばったりで哲学
がない、方向性が見えない」などといった非難が寄せられ、理念と目標
があっても、目標までのプロセスや実行計画が明確でない場合には、
「さて、いったいどうやるの、お手並み拝見」といった冷ややかな視線が
向けられます。最初から両方そろっていればいいのだが、そうでない
場合は、実行計画の整備がいささか遅れていても理念や目標を先行
させたアプローチの方に僕は好感を持ちます。以下は理念目標先行型
の一例です。

『赤松広隆農相は17日、東京都内で行われたシンポジウムで講演し、
3月に策定する食料・農業・農村基本計画に盛り込む食料自給率
(カロリーベース)目標について、既に方針を固めている「10年後
50%」に加え「20年後60%」を掲げる意向を示した。意欲的な数値
目標を掲げることで、低迷している食料自給率を飛躍的に引き上げる
狙いだ。』『2005年に決めた現行計画では、10年後に当たる15年度
の目標として食料自給率45%を掲げた。ただ、実際の食料自給率は
横ばいを続け、08年度は41%にとどまっている。赤松農相は、国際的
な食料不足が進む中では「とてもこのペースでは間に合わない」と強調。
その上で「10年後には50%、20年後にはなんとか60%。少なくとも
日本の食料の半分以上は自国内で賄うことができるよう、基本計画に
示していきたい」と述べた。』(「e農net/日本農業新聞」より引用、掲載
日:2010-02-18)

そういう基本計画が盛りこまれるであろう「平成22年版 食料・農業・農村
白書」に目を通すのが今から楽しみですが、現在40~41%の食料自給率
(「平成21年版 食料・農業・農村白書」では、2007年の食料自給率は40%)
を50%、そして60%に高めるにはどんな根本的な、あるいは過激な方法が
あるのか、あるいは必要なのかを、ここでは、手段の実現可能性にはあま
りこだわらずに、食べものの消費構造と食べものの生産構造を軸にして、
思い描いてみたいと思います。

食べものの消費構造という場合には、人(ヒト)がどんなものを食べるかと
いうことだけでなく、家畜(牛や豚や鶏)がどんな飼料を食べるか、家畜に
どんな飼料を食べさせるかということも関連してきます。

食料自給率を計算するときの食料には、コメと畜産物、油脂類(90%が
大豆油や菜種油やヤシ油のような植物油)、小麦や砂糖、魚介類に野菜、
大豆、果物などが含まれます。カロリーベースの食料自給率は、そこで
穀類や肉類や油脂類の占める比重が高いので、われわれ人間が食べる
穀物の自給率に依存するだけでなく、日本に住む家畜(牛や豚や鶏)が
食べる穀物の自給率にも依存します。

現在のわれわれは畜産物(肉や卵)をよく食べますが、牛や豚や鶏の
エサ(飼料)のほとんどは穀物か植物系のもので、その9割は輸入されて
います。輸入量はトウモロコシが抜きんでて多く、大豆の油かす、大麦と
続きます。家畜用飼料の輸入が仮にストップしたら、牛や豚や鶏はあわ
れにも飢え死にしてしまうので、その場合は日本では畜産物が生産でき
ません。従って、畜産物のうち国産飼料で育てられたであろう割合だけを、
自給された畜産物として食料自給率にカウントしています。

以下は、いくつかの、乱暴な手段の選択肢です。

◇ ◇ ◇

【選択肢(1)】

(ヒトの)食事内容を1965年へと昔帰りさせる。

1965年は戦後の高度成長期の最中ですが、1965年の日本の食料自給
率は73%だったので、当時の食生活というか当時の食べものの消費構造
と農産物の生産構造にもどれば自給率は70%を超えます。つまり、肉類と
油脂類(主に植物性の油)の消費量を現在のレベルの半分以下にして
(40%)、その分お米をたくさん(今の1.8倍の110kg)食べるという方法です。
ただし、この場合、日本の人口が1億2750万人で、コメは1400万トン必要
ですが、コメの生産量は865万トン(2008年)なので、535万トン不足し、
逆に、畜産物は現在の生産量でも70%近く余ります。肉類の消費量が少
なくなれば、フライやから揚げや炒め物などに大量に使っている植物油の
消費量も減ります。それでも植物油は足りませんが、これは、まあ、大きな
問題ではありません。

僕の得意とするおおまかでおおざっぱな計算だと、1965年当時よりは
畜産物を7割ほど多めに食べ(現在の65%程度の量)、1965年当時よりは
ご飯を2割ほど少なくしても(現在の1.5倍くらいの量)、食料自給率60%は
達成できると思います。その場合でも、コメは1120万トンほど必要なので、
250~260万トンは不足しますが、ゲンタン(減反)政策(コメの作付面積を
減らすこと)をやめてできるだけ元のコメ生産に戻し、耕作放棄地を強引に
コメ生産に回せば不足分は補えます。

【選択肢(2A)】

ヒトの食事内容はそのままで、家畜の飼料を自給、つまり国内生産する。
家畜飼料の国内生産に応じた穀物の生産構造(生産品目と量と耕地)を
整える。

おおざっぱにまとめたものですが、それなりに便利なので、以前にもこの
ブログの別記事で使った表をもう一度使います。


 
   <日本(人と家畜)の穀物消費を、大雑把にまとめると・・・>
----------------------------------------------------------------------------------
     人間が食べる(50%)   ◇     家畜が食べる(50%)       
----------------------------------------------------------------------------------
                     ◇ 鶏が食べる ◇豚と牛が食べる
                        (25%)        (25%)
----------------------------------------------------------------------------------
     米      ◇     小麦やトウモロコシや大豆など         
----------------------------------------------------------------------------------
   1000万トン   ◇ 1000万トン ◇ 1000万トン ◇ 1000万トン  
----------------------------------------------------------------------------------
    (25%)        (25%)       (25%)       (25%)
----------------------------------------------------------------------------------
  国内自給(25%) ◇            輸入(75%)                  
----------------------------------------------------------------------------------



上の表のひとつの意味は、日本では、コメや小麦、大豆やトウモロコシ
などの穀類は、人間と家畜がほぼ半分ずつ分け合っているということ、
もうひとつの意味は人と家畜の食べる穀物の75%近くが輸入されている
ということです。より正確な家畜用飼料の輸入量は、「平成21年版 食料・
農業・農村白書」によれば、2007年は1889万トンで、その内訳は、「トウ
モロコシ」が1206万トンで64%、「大豆の油かす」が343万トンで18%、
「大麦」が120万トンで6%、この3つで全体の88%になります。

選択肢(2A)の意図は、日本で育てられている牛と豚と鶏が食べている
飼料(エサ)はその9割が輸入されているが、仮にこれが全部日本で生産
されたとしたら、食料自給率にどういう影響を与えるかということです。
影響が加わる主な食料自給率構成要素は、畜産物と油脂類ですが、
その結果、畜産物の食料自給率貢献度は現在の2.5%から10.3%へと
7.8ポイント上昇し、また油脂類における自給率貢献度は、現在の0.5%
から3.7%へと3.2ポイント上昇します。その結果、食料自給率は40%から
51%へと11ポイント改善し、50%の壁を突破します。

ただし、この選択肢を採用した場合、そのために新たに耕地が429万ha
(ヘクタール)必要で、これは現在の日本の耕地面積が461万haなので、
耕地を倍近くに増やすということです。ここでは手段の実現可能性には
あまりこだわらずに、選択肢のスケッチをしていますが、しかし、これは
とても難しい、というか、不可能に近い。

(冗長な註:「大豆の油かす」が自給できるということは、「大豆の油かす」
の元である「大豆そのもの」が自給できるということで、「大豆そのもの」
は豆腐・油揚げ・煮豆・納豆・味噌・醤油などに使われるだけでなく、代表
的な植物油である「大豆油」製造にも使われます。大豆の消費量は
「油向け」が圧倒的に多くて75%を占めるが、この、油の圧搾プロセス
ないし化学溶剤を使った油の抽出プロセスでのあまりものが「大豆の油
かす」です。100の大豆から50少々の油かすがとれます。「大豆油」の年間
消費量は55万トンで全油脂消費量の23%くらいですが、これがすべて
自給できるのでこの分だけ自給率貢献度が高まります。蛇足ですが、
これだけ大量の大豆の油かすができるということは、大豆生産量が日本
の消費量を超えるということなので、その場合は、日本は大豆あるいは
付加価値をつけた大豆油の輸出国になれます。)

【選択肢(2B)】

ヒトの食事内容はそのままで、家畜の飼料内容をコメを中心としたもの
へと変える。家畜の食事内容の変化に応じた穀物の生産構造(生産品目
と量と耕地)を整える。

家畜飼料全部の国産化はとても難しいので、集中と選択ではありません
が、いちばん消費量の多い家畜用飼料であるトウモロコシをコメ(飼料米)
で代替したらどうなるかというのがこの選択肢です。

トウモロコシは、北海道などでわずかに国内生産されていますが、国産品
はスイートコーンのようなおやつ用途で、飼料としてはほぼ全量が輸入さ
れていると考えて差し支えありません。「平成21年版白書」では2007年の
トウモロコシの輸入量は1206万トン、これをコメですべて代替するには
どれくらいの量のコメが必要かが最初の問いです。トウモロコシとコメを
比べると、たんぱく質や脂質は少しトウモロコシが多いのですが、エネル
ギーはともに100グラムあたり350kcalとほぼ同じなので、1206万トンのトウ
モロコシを置き換えるには1206万トンのコメが必要だと、ここでもおおまか
に考えることにします。

主食用米は、866万トンが160万haの水田で作られているので、この比率
をそのまま適用すると、1206万トンを追加生産するには223万haの水田が
新たに必要です。現在の名目上の水田面積は239万haですが、これは
上述のいわば「実質的な160万haの水田」と、減反(ゲンタン)政策で
「実質的には水田ではなくなった79万haの水田」(今は、麦や大豆や野菜
や飼料作物などに利用されている)の合計値です。耕作放棄地面積が
39万haあるので、非実質的な水田と耕作放棄地の両方をコメ生産に振り
向けると118万haが、計算上は、確保できます。でもまだ105万haが不足
しています。選択肢(2A)でも述べたように、現在の日本の耕地面積が
461万ヘクタールなので、その不足分の105万haを手に入れるためには
あらたに23%の耕地(水田)を作る(開拓する、作る、元に戻す)必要が
ありますが、579万ha(461万ha+105万ha)とは、1960年代後半に日本に
存在した耕地面積とほぼ同じです。かつて存在した光景ですから、とても
困難ですが、不可能ではないかもしれません。

しかし、仮に105万haが確保でき、トウモロコシがコメで完全に代替でき
たとしても、これによる食料自給率貢献度は5ポイントで、つまり食料
自給率は45%にとどまります。苦労のわりには効果が低いという印象の
選択肢です。

◇ ◇ ◇

乱暴な選択肢を思い描いてきましたが、われわれの食事内容をコメを
増やすような方向で変化させ、同時に肉類と油脂類を減らしていくのが、
食料自給率60%という状況を作り出すには、どうも最も近道のようです。

肉とパンと油っぽい料理が好きな方にはうんざりする「近道」ですし、
「消費者の食事内容や消費構造には口を出すな」というのももっともな
意見ですが、その場合は、食べもの需給の逼迫には目を閉じて食料
自給率は40%でよしとするか、農地の大幅な追加のために国内ランド
ラッシュとでも呼ぶのがふさわしい荒っぽい手段をよしとするかになり
そうです。

朝食や昼食にご飯を食べる回数を増やす。従来のパンや麺類だけで
なく、米粉入りのパンや麺類も楽しむ。肉類の食事や油脂を多く使う
料理は少し控える。少子高齢化は産業一般の経済成長には不利ですが、
中年以上の人口が多いということは、外部からの強制力が少なくても、
そうした食事内容の変更には有利に働きます。コメ(玄米や白米)には
消費税をかけない、コメには自給率エコポイントをつけるといった方策も
いいかもしれません。

(初春 2010)




お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと

以下は、僕のブログ「高いお米、安いご飯」に書いたものと同じ内容で
す。ブログでは、6回に分けて書いたのですが、ここでは読みやすさを
考え、ごく一部を削り、連続したひとまとまりとして掲載します。

◇◇◇

お米の自由化が議論されていますが、お米の自由化に関して個人的に
確かめておきたいことがいくつかあるので、雑感も交えながら、それらを
まとめておきたいと思います。途中わからないことが出てくると思いますが、
わからない点はわからないので、そういった部分についてはわからないと
書きます。



自由化には輸入と輸出の2つの側面がありますが、僕が確かめておきたい
こととは以下のような事柄です。

1.基本の確認:各国とも自国のコメが好き、なぜならそれがおいしいから
2.世界のコメの値段をおおまかにグルーピングすると・・
3.自由化になった場合、日本は魅力的な輸出ターゲット国なのか
4.その場合、どんな国が日本にコメを輸出してくるのか
5.寄り道して、カリフォルニア産コシヒカリのアメリカ国内での消費者価格
  は?国産コシヒカリの日本での消費者価格と比べて、本当に安いのか?
6.その時の、それらの国からの輸出価格(日本にとっては輸入価格)は
  どれくらい?
7.自由化するときの国産米の価格?いくつかの選択肢
8.どういう環境になれば、日本から、たとえば中国に、コメの輸出ができる
  のか



ここで使うコメ関連のマクロな統計数字は米国農務省発表のものです。米
農務省発表のコメの生産量や輸入量は、たとえば日本の場合、農林水産
省発表の数字より8~9%少ないのですが、他の国の数字との整合性を重
視してそのまま使います。 



1.基本の確認:各国とも自国のコメが好き、なぜならそれがおいしいから

おコメは主食として食べられるか、野菜の延長として食べられるかは別に
して、各国・各地の風土と適合的な料理のなかでその役割を演じてきました
し、演じています。アルデンテなリゾットを好むイタリア人たちは、ジャポニカ
米のリゾットを食べようとは決して思わないでしょうし、バンコクで食べるタイ
料理にはやはりインディカ米だし、インドで好まれるのはカレーによく合う
長粒種だし、香港で広東料理の最後に食べるチャーハンはパサパサした
お米に限ります。しかし、日本では、干物と納豆と味噌汁とふっくらとしたご
飯の朝食です。僕たちのDNAには、1500年をかけて改良を重ねたジャポニ
カ米のおいしさが刷り込まれています。ひょっとして、唯一の例外は、そも
そもコメを輸出用作物として生産し始めたアメリカかなとも思いますが、生
産地域ではやはり地域のコメが一番おいしいのでしょう。



2.世界のコメの値段をおおまかにグルーピングすると・・

結構、大雑把ですが、世界で生産量・流通量の多いコメ(インディカ種と
ジャポニカ種)の値段をグルーピングすると以下のようになります。価格は
比較のために、日本で一般的に使われる60kg(1俵)あたりの円価格
(1ドル=90円)で表示しました。

なお、日本のお米はジャポニカ種でこれは世界では少数派でその生産量
シェアは15~16%くらい。圧倒的な多数派はインディカ種で世界の生産量
シェアは80%。また、インドネシアのジャワやイタリアでは、最も少数派の
ジャバニカ種と呼ばれるコメが生産されています。イタリア料理のリゾットは
これを使います。

最も値段の高いグループが、「日本のお米」と「カリフォルニア産のコシヒカ
リ」で、15,000円ぐらい。(カリフォルニア産コシヒカリのアメリカでの消費者
価格・店頭価格については後述します。)

どれくらいの市場規模かわからないので、グループとして取り上げるのは
乱暴なのですが、上海のような都市部の中国人富裕層が買い求める良質
米が、これは店頭価格ですが、60kg換算で8,100円(1kgあたり価格が10元
という現地レポート、1元=13.5円で60kg換算)。乱暴ついでに、このグルー
プの市場規模を推定してみると、中国のコメ年間消費量は1億3413万トンな
ので、富裕層がその0.5%を買うとすると、市場規模は67万トンで、これは日
本人全体の1か月分のコメ消費量とほぼ同じです。大間の本マグロも大分
の原木栽培シイタケも中国の富裕層向けに買い占められる時代なので、
8,100円は特に驚く価格ではありません。

無理やり荒縄でひとつのグループにしばったという感じもありますが、その
次のというか第3グループには「アメリカ産の中粒種ジャポニカ米」と「パキス
タンのバスマティーとよばれる香り米」と「タイのホムマリとよばれる香り米
(ジャスミンライスのこと)」が入り、これらはそれぞれに輸出量の多い輸出
指向のコメですが、このグループの価格帯が5,500円~6,500円くらい。

4番目のグループが、世界のコメ価格といった場合によく引き合いに出され
る ”Thai White Rice 100% Grade B, FOB” で、タイ産のインディカ米です。
これは白米ですが、値段はタイでの引き渡し価格で、3,250~3,350円。輸
入価格はこれにパッケージング費用や輸送費や輸出諸掛などを加えたもの
になりますが、僕は面倒なので10%上乗せして計算しています。こういった
世界の主流コメ価格は騰勢傾向なので、もっと高くなると思われます。



3.自由化になった場合、日本は魅力的な輸出ターゲット国なのか

日本は、他のコメ生産国にとって魅力的なコメ輸出市場か、というのがここ
でのテーマです。

コメはトウモロコシなどと違って、バイオ燃料などには使われないので、生
産量=消費量と考えられます。各国の備蓄分がありますが、話の基本に
影響を与えることはないのでここでは考慮しません。

米国農務省データによれば、2008年の日本の年間コメ生産量は800万ト
ンで、これは世界のコメ生産量が4億4000万トンなので、その1.8%です。
つまり、日本のコメ市場は、世界コメ市場という大きなパイの小さいひとか
けらです。日本のコメ市場は米粉の活用などによってゆるやかな成長は
期待できますが、今後の大きな成長は見込まれません。おそらく他の国
もそう見ているでしょう。

つまり、日本はコメ需要に関しては大きな伸びが期待できないので、日
本以外のコメ生産国が現地生産の良質ジャポニカ米を日本に輸出しよう
と作戦を練ることは、経済が急成長し都市化が進み人口が増加する中国
市場やインド市場をターゲットに、工業先進国が、それらの国の消費者ニ
ーズに合わせた簡易仕様と低価格で自動車や家電やハイテク製品を現
地生産ないし輸出することとは、相当に違います。

上述したように、日本のお米はジャポニカ種でこれは世界では少数派で
その生産量シェアは15%くらいです。圧倒的な多数派はインディカ種で
世界の生産量シェアは80%なので、日本は市場サイズや商品仕様(種類)
から見てニッチマーケットということになります。そういう観点からは、日本
は魅力的な市場ではありません。

しかし、コメの国内価格が世界で最も高い日本のコメ市場とその規模を、
世界のコメの貿易量という観点から眺めるとまったく違った光景が見えて
きます。穀物は、家電や自動車と違って基本は地産地消商品なので、輸
出比率ないしは海外販売比率は高くありません。コメの場合だと総生産
量のうち、海外輸出に回される割合はわずか5.1%です(世界のコメ総生
産量は4億4000万トンで、コメの年間輸出量は2950万トンなので5.1%)。
日本のコメ市場は800万トンなので、日本がコメを自由化すれば、既存の
世界貿易市場の27%という規模で「新しい潜在市場」が急に現われること
になります。これは輸出指向のコメ農業立国にとっては魅力的な話です。
ただし、これが成立するのは、日本人が好む仕様(品質とおいしさ)の
ジャポニカ米を、国産米よりも納得のできるほど安い値段で継続して提供
できる場合に限られますが。



4.その場合、どんな国が日本にコメを輸出してくるのか

日本にジャポニカ米を輸出しようとする国を想定するには、コメの種類や
食味の議論以前に、まず、その国がコメを輸出する輸出余力があるか、
その国にコメの輸出指向があるかどうかを見た方がよさそうです。日本
が米市場を開放すれば、世界の各地で日本人向けのジャポニカ米を作っ
て日本へ輸出してくるだろうという意見もあり、それなりに説得力があり
ます。では、その世界の各地とはいったいどこなのか。

輸出余力国とは、コメの生産量が十分に大きくて国内消費以外の分を輸
出にまわすことの出来る国のことをさし、そういう国が実際にある程度の
規模のビジネスとしてコメを輸出している場合に輸出指向があると、ここ
ではいいます。そういう国は、現在、世界中で4カ国です。4カ国しかない
ともいえます。その4カ国とは、輸出量の大きさの順に、タイ、ベトナム、
パキスタン、アメリカです。

中国とインドは、それぞれ世界1位と2位のコメ生産国ですが、国内需要
の対応に忙しくて、輸出比率は中国が1%、インドは2.6%。両国とも人口が
増え都市化が進んでいるので、農地の減少や水不足といった問題もあり、
まもなく輸出余力はなくなると考えられます。中国は、コメ生産量の80%
がインディカ米で、残りがジャポニカ米。インドは名前の由来どおりイン
ディカ米で、その中には香り米のバスマティーも含まれます。

ベトナムはコメ・ビジネスに関してタイと共同歩調をとっているので、コメ
生産やコメ輸出に関しては、ベトナムには失礼だとは思いますが、ここで
はタイのサブセットと考えて話を進めます。なお、タイやベトナムでは生産
統計などには現われない規模でジャポニカ米を栽培しているようですが、
詳細はよくわかりません。

パキスタンは、小麦国であると同時に、香りが豊かで世界で最も高価な
インディカ米といわれるバスマティーで有名ですが、その意味でブランド
を確立しており中近東を中心に輸出も好調そうなので、日本向けジャポ
ニカ米に手を広げるモチベーションがあるとは思われません。

そこで、まず、タイです。生産品種はインディカ種。生産量は1940万トン
で、輸出量は900万トン。生産量の46%余りを輸出していますが、輸出米
の25%が高付加価値米の香り米(いわゆるジャスミン・ライス)です。輸
出地域別の内訳は、中東とアフリカで56%、フィリピンを加えると70%、
中国にはタイ高付加価値米のファンが多いようで5%、日本には1.5%。

タイには2~3度しか行ったことがないので日本語や英語で書かれた断
片を読んだ印象が中心になりますが、タイの人たちのコメに対する感受
性というか繊細さはすごいなと思います。インディカ米に関しては、輸出
先のニーズにあったコメを生産する体制が出来ているようですし、輸出
向け商品のグレード分類などは実に細やかです。だから、作ろうと思え
ば、自分たちのDNAが記憶しているおいしさとは味の異なるジャポニカ米
といえども、ビジネスレレベルでの生産が比較的簡単に出来そうです。

ただ、日本への輸出ビジネスのためには、自分たちが必ずしもおいしい
とは思わないジャポニカ米を、自分たちがおいしいと思っており輸出先も
確保できているおいしいタイ米の生産を抑制しても生産するのか、ある
いはそのために新たに水田開拓をするのかという疑問は残りますが、
自国の好みはさておき、顧客国のニーズにあった商品を生産するといっ
た日本人も得意なモノ作りというかマーケティングの原点を共有している
と思えば、たいして厚い壁ではないのかもしれません。

次にアメリカですが、コメ生産量は日本の81%です。最近は、アジア系の
国民も増えてきたので、内需対応にも力を入れているようですし、日本
全体の年間消費量の1か月分くらいの量のコメも輸入していますが、もと
もとは輸出用作物としてコメの生産が開始されたようです。現在もコメ輸
出比率は50%です。つまり、最初からコメに関しては輸出指向で、現在
は4番目に大きいコメ輸出国です。かつては世界最大のコメ輸出国でし
た。現在の主な輸出先は、中南米、中東、アフリカ、EUなどですが、コメ
に関しては、基本的に輸出の好きな国だと思います。



5.寄り道して、カリフォルニア産コシヒカリのアメリカ国内での消費者
  価格は?国産コシヒカリの日本での消費者価格と比べて、本当に
  安いのか?

2000年3月発表の調査研究報告書に「世界のジャポニカ米 -現状と潜
在的生産能力- 国際情勢の変化と日本のコメ輸入」と題するものがあ
り、その中の論文のひとつにアメリカ主要各地での1999年現在のジャポ
ニカ米の消費者価格(日系スーパー、中国人系スーパー、地元スーパー
などの店頭価格)が記載されています。主要各地とはサンフランシスコ、
ワシントンD.C.、ヒューストン、シカゴ、ロスアンゼルスで、調査対象のジャ
ポニカ米は、Aランク米としては「カリフォルニア産コシヒカリ」や「田牧米」
(「田牧米」はもともとは中粒種の改良版、その後、「田牧米クラシック」と
「田牧米ゴールド」に展開。「田牧米クラシック」は良質カリフォルニア産
アキタコマチをパッケージングしたもの、「田牧米ゴールド」は良質カリフォ
ルニア産コシヒカリをパッケージングしたもの)などで、また、Bランク米と
しては「国宝ローズ」(一般用、中粒種改良版)や「錦」(中粒種改良版)
という日本人の舌にはあまり訴えかけてこない銘柄がとりあげられてい
ます。

最近はブログが盛んなので、最新のカリフォルニア産コシヒカリやカリフォ
ルニア産ジャポニカ米のアメリカでの最新(2009年10月現在)の消費者
価格(店頭価格)がアメリカ(フィラデルフィア)在住の日本人主婦によっ
てきちんと書き込まれていたりします(「アメリカでおいしいお米」「田牧米
ゴールドの値段
」)。僕も1990年代前半にコンピュータ関連の仕事でカリ
フォルニアに赴任していたので、我が家では「国宝ローズ」は一度で卒
業しましたが「田牧米」にはある程度お世話になりました。ブログ主婦さん
の感想(『やはり値段が割高でも田牧米ゴールドがおいいしいです!田
牧米ゴールド食べちゃうと国宝ライスには戻れないので余ったお米の使
い道を考え中です。。。』)はよく理解できます。

さて、カリフォルニア産コシヒカリなどが今のアメリカではどのくらいの値段
で消費者に販売されているかを、上述ブログ主婦さんが地元の日系食品
スーパーで購入した「田牧米ゴールド」(カリフォルニア産コシヒカリ)と「
がやき
」(田牧米ゴールドよりはいくぶん価格の安いカリフォルニア産コシ
ヒカリ)、および中国人系スーパーで買った「国宝ライス」(国宝ローズ
Kokuho Rose Riceのことだと思いますが、これはカリフォルニアやテキサ
ス、アーカンソーでも生産されている中粒種改良版の代表的な品種)の
値段で見てみたいのですが、1999年の調査報告での店頭価格も眺める
ことによって、価格変化も同時に見ることにします。そして、それを2009年
11月現在の日本産コシヒカリやその他の日本米の日本のスーパーでの
店頭価格と比較したらどんな結果になるでしょうか。

なお、アメリカは広いので、ブログ主婦さんのフィラデルフィアと比較的近い
場所という意味で、1999年調査からはシカゴとワシントンD.C.の店頭価格
を選びました。また、10キロ入りのお米は5キロ入りのものよりも普通は
キロ当たり単価が少し安くなっていますが、そのための調整係数は当該
論文記載のものを援用して、20ポンドに統一しパッケージサイズの差から
来る価格誤差を除いています(10ポンド袋のポンド単価を1.000とすると、
5ポンド袋ではポンド単価が1.070、20ポンド袋では0.855)。20ポンドに統
一したのは20ポンドは9.07キログラムなので、日本でもスーパーなどで
よく見かける10キログラム袋と価格比較をしやすくするためです。為替
レートは、1ドル=90円です。

「田牧米ゴールド」(カリフォルニア産コシヒカリ)、「かがやき」(カリフォル
ニア産コシヒカリ)、「国宝ローズ」(中粒種改良版)のそれぞれの店頭価
格(フィラデルフィア、日系食品スーパー、2009年10月)を20ポンド袋換算
するとそれぞれ以下のようになります。なお、その右に1999年当時の同じ
銘柄ないし同じ種類のコメの店頭価格、および10年前の何倍になってい
るかも併記します。

田牧米ゴールド: $44.43 (コシヒカリ:  $16.50)(2.7倍)
かがやき:     $36.84 (コシヒカリ:  $16.50)(2.2倍)
国宝ローズ:    $18.79 (国宝ローズ: $10.38)(1.8倍)

世界のコメの値段は、2009年秋頃は、今もそうですが、1999年の約2倍
になっているので、上の数字はマクロの価格傾向値と合っています。おい
しいものは平均以上に高く、そうでないものは平均を下回る倍数で、とい
うことのようです。

ここで、この3つの商品を2009年11月の国産米の日本での店頭価格と比
べてみます。札幌にある、ナショナルブランドのスーパーでの10kg袋の店
頭価格です。上記の「田牧米ゴールド」「かがやき」などは20ポンド袋
(9.07kg)での価格なので、以下はそれを、1ドル=90円で、10kg袋に円
換算した値段です。

田牧米ゴールド(コシヒカリ):¥4,409 vs. 新潟産コシヒカリ: ¥4,380
かがやき(コシヒカリ)     :¥3,656 vs. 茨城産コシヒカリ: ¥3,980
かがやき(コシヒカリ)    :¥3,656 vs. 北海道産ほしのゆめ:¥3,250
国宝ローズ(中粒種改良米):¥1,864 vs. 比較対象となる中粒種無し

「田牧米ゴールド」や「かがやき」といったカリフォルニア産のコメの値段は、
フィラデルフィアでの消費者価格(店頭価格)です。日本に持ってくる場合
には、運送費や輸出諸掛や日本での流通費などが余分に必要なので、
生産者マージンや流通業者マージンをバサッと切り詰めない限りは上記
価格より高くなることは確かです。

日本人においしいと評価されるアメリカ産のジャポニカ米の値段は、消費
者価格で見る限り、日本のおいしいおコメの値段とほぼ同じです。



6.その時の、それらの国からの輸出価格(日本にとっては輸入価格)は
  どれくらい?

まず、アメリカです。

前項で、カリフォルニア産コシヒカリのフィラデルフィアでの店頭価格は、
国産コシヒカリや北海道米の札幌での店頭価格がほぼ同じということが
わかりました。(ただし、南魚沼産コシヒカリのようなブランド・コシヒカリ米
は日本でも別格なので比較対象外としました。)

次に考えたいのが、コメの生産技術や生産管理です。つまり、カリフォル
ニア産コシヒカリが、今後、国産コシヒカリや国産良食味米にたいして圧
倒的な品質優位性や価格優位性を発揮する余地が、まだ残っているか
どうかです。

僕は、その方面の詳細には明るくないので、消費者ないしは一般ビジネス
マンとしての感想になりますが、そういう余地は少ないだろうと考えていま
す。なぜなら、中粒種の食味改良には結構長い歴史があり、また少なくと
も過去25年間(たとえば田牧米が登場したのが1988年)は、コシヒカリや
あきたこまちといった短粒種の現地生産(現地化)を推進してきたからです。
現地化ビジネスには日本からの資本参加があり、ということは、日本人農
業技術者の参加があったということですから、食味改良や生産技術改良の
ための余地が、日本以上の大きさで残されているとは考えにくい。

アメリカでジャポニカ米の生産がほとんどないような状態ならジャポニカ米
の生産規模拡大による価格低下ということが見込まれますが、ジャポニカ
米(短粒種と中粒種)の生産量はアメリカのコメ生産量のすでに20%なので、
規模拡大による価格低下ということも考えにくい気がします。高付加価値
短粒種米の、生産者マージンや流通業者マージンがよほど大きい場合は
それを我慢できる比率にまで切り詰めて日本に輸出攻勢をかけるという手
もありますが、その影響力がどれほどのものかはよくわかりません。

つまり、自由化になったとしても、アメリカから輸入されるカリフォルニア産
コシヒカリのような良食味短粒種ジャポニカ米の日本での店頭価格は、日
本の各地のコシヒカリなどの店頭価格と変わらないと思っています。しかし、
日本市場に攻勢をかけるために2年間ほどは低価格戦略をとってくるかも
しれません。その両方を勘案すると、アメリカからの輸入価格は、とても大
雑把ですが、10,000円と15,000円の間のどこかだと推測しています。

ここで、再び、「田牧米ゴールド」「かがやき」「国宝ローズ」に戻りたいので
すが、今度はカリフォルニア産コシヒカリである「田牧米ゴールド」「かがや
き」と「国宝ローズ」の価格差です。

「田牧米」は「国宝」の2.4倍、「かがやき」は「国宝」の2.0倍です。

念のために、2007年7月現在のアメリカのある都市でのジャポニカ米・店
頭価格(消費者価格)を見ても、「田牧米」と「かがやき」は、「国宝」のそ
れぞれ、2.2倍、1.6倍となっていました。倍数に若干の違いはありますが、
カリフォルニア産コシヒカリは、アメリカ産ジャポニカ中粒種改良版の2倍
(ないし、ブランドによってはそれ以上)と考えて差し支えないと思います。

その差が実際にはどこから来たのか、できたら専門家の分析をお願いし
たいのですが、そういうわけにもいかないので、ここはマーケティングの
一般論で話を進めます。

高級品と一般品の価格差とは、一般的には付加価値の差です。付加価
値の差とは、洗練された商品仕様であるか一般的な商品仕様であるか、
高いレベルの品質なのか一般的な品質なのか、商品に直接かかわる
開発コストや部品コスト、直接労務費や直接設備費用などを含む生産
コストが高いのかそれとも一般的なのか、その商品のブランド化価値が
高いのか安いのか、ブランド価値にも関係しますが高マージン指向商品
か低マージン設定商品か、などの差のことです。そうした差の集積が価
格差を生み出し、消費者はその差に納得します。

で、僕の仮説ですが、「コシヒカリは、大規模機械農業のアメリカといえど
も栽培に手間ひま(人間と機械)がかかり、歩留まりが相対的に悪くて、
つまり生産コストが高くて、かつブランド価値が高い(ジャポニカ米ファン
にはとてもおいしい)ので生産者マージン・流通マージンも高い、そうい
うコメ商品」です。この仮説は「タイのコシヒカリ」を考えるときにも援用し
ます。

次にタイです。

タイは、コメという商品の顧客向けカスタマイズが得意な国のようですし、
自国米の価格維持にも配慮しています。輸出価格を高めに安定的に維
持するためベトナムと協調しており、ベトナムは時々安売りに走りますが、
タイはそういうことは少ないようです。

タイのこの20年ないし10年のコメ生産量の伸びは、1989年から1999年に
かけての伸びが21%、1999年から2008年にかけての伸びが18%なので、
二期作における乾期の収穫量を増やすといった灌漑などの生産技術が
貢献しているのだと思いますが、ゆっくりとした生産量の伸びです。農地
面積などの急激な変化はありません。

ここで考えたいのは、日本がコメを自由化した場合、タイがコシヒカリのよ
うなおいしいジャポニカ米を生産し始めるとして、そういうジャポニカ米を
どれほどの規模で栽培し、どれくらいの価格で日本に輸出してくるかとい
うことです。ここでは、タイが、良食味ジャポニカ米を技術的にはなんら問
題なく、高級香り米(ジャスミンライス)と同じような生産コストで生産でき
るものと「暫定的に仮定」しますが、そうすると日本での計算上の輸入
価格は6,000円弱です。

現在、タイから日本へ食用として輸出されているのは、ミニマムアクセス
米の一部とエスニック料理用の高級香り米だけなのでその量はごくわず
かです。

自国の生産の都合と、競合(ここではアメリカのコシヒカリ)の出方の2つ
が基本パラメーターになりますが、競合の価格をにらみ、日本の米価を
にらみ、高めの安定した価格を維持するという自身の指向性を重視すれ
ば、タイが、コメを60kg(1俵)当り6,000円で売るという可能性はとても低
いのではないかと思います。長期なら別ですが、短期では追加生産余力
も商品転換余力もなさそうです。

日本へのコメの輸出は、急に拡大し始めたハイテク製品市場を低価格
商品で席巻するのとはわけが違います。輸出価格が60kgあたり
10,000円だと800万トンの消費量で市場規模は1兆3300億円、それが
6,000円だと途端に小さくなって8,000億円。とくには拡大する市場では
ないので市場は大幅に縮小します。目的が日本のコメ産業をつぶすつ
もりならそのオプションもありうるでしょうが、そうなれば、水田と生産量
を大幅に追加拡大してそれを既存のインディカ米輸出市場に振り向け
ない限り、タイはコメ生産量の40%をジャポニカ米に転換し、輸出量の
90%近くを日本という1カ国に依存するというとても危うい体質になって
しまいます。

さて、先ほどの暫定的な仮定とは、「タイが、良食味ジャポニカ米を技術
的にはなんら問題なく、高級香り米(ジャスミンライス)と同じような生産
コストで生産できるものと『暫定的に仮定』しますが、そうすると日本での
計算上の輸入価格は6,000円弱です。」でした。

本当にそうでしょうか。先ほどカリフォルニア産コシヒカリに関して「コシヒ
カリは、大規模機械農業のアメリカといえども栽培に手間ひま(人間と機
械)がかかり、歩留まりが相対的に悪くて、つまり生産コストが高くて、
かつブランド価値が高い(ジャポニカ米ファンにはとてもおいしい)ので生
産者マージン・流通マージンも高い、そういうコメ商品」だという仮説を述
べました。その根拠は、現実の消費者価格・店頭価格の高さであり、
一般ジャポニカ米との価格差です。

かつては、アメリカが世界最大のコメ輸出国でした。現在はタイが世界最
大のコメ輸出国です。タイはコメ作りがとても得意そうです。しかし、タイと
いえども、コシヒカリのようなコメをビジネスベースで大規模に生産しようと
したら、タイは労働集約型農業、アメリカは大規模機械農業という違いが
ありますが、アメリカと同じような生産課題やビジネスモチベーション課題
を抱えるのではないかと思います。

だから、日本への輸出を企図するとしても、アメリカの出方や日本の米価
の変化や日本国民の反応を伺いながら、高級インディカ米・一般インディ
カ米・日本向けジャポニカ米からなるバランスの良いコメ商品ポートフォリ
オを維持するという構図の中での話ではないでしょうか。つまり、カリフォ
ルニア産コシヒカリの輸出価格を参考にしたプライシングをすると思うので、
「タイ産コシヒカリ」(が、それなりの規模で生産されたとしても、その)輸出
価格は似たようなものになるのではないかと思っています。



7.自由化するときの国産米の価格?いくつかの選択肢

わかりにくい表題のつけ方をしてしまったので、修正します。現在は60kg
あたり15,000円が日本の米価ですが、これがいくらくらいになったとき安
心して自由化できるのか、というのがここでのテーマです。15,000円の
ままでとくには問題がないという考え方があるかもしれませんし、規模
拡大や費用の圧縮などを軸に生産性を高めて、その結果米価が
10,000円くらいまで安くなったときが自由化に踏み出すポイントだという
考え方もあります。生産費と米価の差額については、現在もある基準で
農家に対する個別(戸別)所得補償制度が実施されていますが、
10,000円になればそれに準じた形の補償方式が導入されることを想定
しています。ここでは、農業所得補償制度という一般的な言葉を使いま
す。

これは難しい問いですが、4つ(実際は3つ)の選択肢を考えます。

(1)現在のいわゆる米価は60kg(1俵)あたり15,000円だが、そういう状
  況で自由化しても大丈夫だ、というのが最初の選択肢で、その要点
  は以下のようになります。

コシヒカリやひとめぼれのようなレベルの高いジャポニカ米はどこの国が
作ったって14,000~15,000円くらいになる。それが5kg袋や10kg袋で同じ
ような店頭価格なら、ほとんどの日本人は国産良食味米を選ぶので輸入
品について気にすることはない。農業所得補償は当面は必要だが、農家
への所得補償は、その方式の種類やWTOガイドラインへの対応がうまい
か下手かといった違いはあるにせよ欧米先進国ではどこでもやっている
ことである。

(2)新しい農業政策の導入や農業従事者のインフラ改善努力、農業
  生産全般にかかわる流通費の圧縮などで、生産者米価が、現在の
  15,000円から10,000円くらいにまで安くなったあたりで、つまり日本
  のコメの国際競争力が現在よりも30%ほど強くなった時点で、それに
  適した農業所得補償制度と組み合わせて実施というのが2番目の
  選択肢で、その要点は以下のようになります。

アメリカやタイからの輸出をかわしながら、中国への輸出を視野に入れる
選択肢。アメリカやタイは、予想を超えた高度な生産技術の導入や、ある
いは政治的な思惑で、コシヒカリやひとめぼれのようなレベルの高いジャ
ポニカ米を、10,000円と15,000円の間の限りなく10,000円に近いあたりで
日本に輸出してくる恐れがあるが、それに対抗する価格競争力をものに
していたら、国産米の中国への輸出が視野に入ってくる。

(3)生産者米価が6,500円くらいまで安くなったあたりで、というのが
  3番目の選択肢

(4)生産者米価が3,500~3,600円くらいまで安くなったあたりで、という
  のが4番目の選択肢

(3)にしろ(4)にしろ、とても実現できない価格という意味では、両者は同
じ。つまり、日本のコメにそこまでの国際競争力をつけないといけないのな
らば、コメの自由化は論外ということ、その場合、ミニマムアクセス米のよう
ないわばペナルティーは致し方ないとして受け入れるが、もっと使い道のあ
る種類と品質の輸入米にしてほしい、というのが(3)(4)のポイントです。



8.どういう環境になれば、日本から、たとえば中国に、コメの輸出ができ
るのか

「2.世界のコメの値段をおおまかにグルーピングすると・・」のなかで次の
ように書きました。『乱暴ついでに、このグループの市場規模を推定して
みると、中国のコメ年間消費量は1億3413万トンなので、富裕層がその
0.5%を買うとすると、市場規模は67万トンで、これは日本人全体の1か月
分のコメ消費量とほぼ同じです。大間の本マグロも大分の原木栽培シイ
タケも中国の富裕層向けに買い占められる時代なので、8,100円は特に
驚く価格ではありません。』

中国の人口は13億人で、コメの年間消費量は1億3,410万トンなので、
一人あたりの年間消費量は100kgです。日本でも1960年代前半は一人
あたり年間110kgのコメを食べていましたが、経済成長と都市化と食の
洋風化でコメ消費量は下がり続け、その量は年間60kgです(去年はわ
ずかに増加傾向を示したようですが・・)。中国の人口は13億人なので、
富裕層をその1%と考えると、その数は1300万人です。中国の急速な
経済成長と都市化と食の洋風化を考えて、その人たちが現在の日本人
と同じ量だけ日本産のおいしいコメを食べるとすると(つまり、中国産の
コメにはジャポニカ米でも手を出さず、コメはより安心な日本産を購入
すると)、日本人はコメを年間60kg食べるので、その年間消費量は
78万トンということになり、これくらいを中国への日本米輸出量と想定し
てもいいのかなという気になります。78万トンは日本のコメ生産量の
9%です(ここでは分母は農林水産省の数字を使用しました)。

日本のコメはブランド米を中心として2007年に中国に輸出され始めまし
たが、イベント・ドリブン風の、つまりお祭り騒ぎ的な輸出開始だったせ
いもあり、その量は今もってグラフ表示ができるような大きさではありま
せん。

上海などで流通している一般庶民の日常食としての現地米の店頭価格
は、10kg袋換算すると175円~265円くらいで、これは日本の安い価格帯
のコメの10分の1以下です。

しかし、その一方、中国では、「コシヒカリ」や「あきたこまち」が東北部の
黒竜江省や吉林省で生産されており、そのうち、黒竜江省産の「コシヒ
カリ」や「あきたこまち」高級品の消費者価格・店頭価格が報告されてい
ますが、それぞれ以下のような具合です。(2009年1月の、「北京新光
天地」(北京にある、日本の三越百貨店出資の合弁百貨店)での価格、
ただしその報告ではそれぞれの商品が、コシヒカリかあきたこまちの
どちらなのかは記載されていない)

最も高いのが、52元/1kg(有機米)、それから、40元/1kg、37元/1kg
と続きます。1元=13.5円を使い、またここでは乱暴ではなく丁寧に
「アメリカのコシヒカリの店頭価格」で利用したパッケージングサイズ調
整係数(1kg→10kg換算の場合は係数が0.645)を適用して10kg袋の
円価格を計算すると、それぞれ、4,528円、3,483円、3,225円となります。
前述したアメリカ(フィラデルフィア)や札幌のコシヒカリ・ほしのゆめなど
の値段と比べてみてください。ともに10kg袋の値段です。違いは、販売
店が、フィラデルフィアでは日系と中国系の食品スーパー、札幌では
全国展開の大きなスーパー、北京では高級百貨店、それから、北京の
商品には一部有機米が含まれているということぐらいです。

値段を調べた時期が、フィラデルフィアは2009年10月、札幌が2009年
11月、北京は2009年1月と違いますが、コメの国際指標価格は3つの
時点でほぼ同じ、消費者価格が国際指標価格を2ヶ月くらいのタイム
ラグで反映すると考えてもほぼ同じです。

なお、四川省に「涼山信頼農園」という有機JAS認定(日本のJASです)
のコシヒカリ(ブランド名は「喜徳の光」)を生産している農園があり、
中国国内の個人消費者向けに10kg単位(5kg袋を2袋)で通信販売して
いますが、この値段が郵送料込みで300元(国内一律価格)。13.5円=
1元で円換算すると、4,050円(価格は2010年1月)。これを加えて、まと
めると以下のようになります。



<中国、北京>

黒竜江省産コシヒカリ/あきたこまち: ¥4,528 (有機米)
黒竜江省産コシヒカリ/あきたこまち: ¥3,483
黒竜江省産コシヒカリ/あきたこまち: ¥3,225
四川省産コシヒカリ           : ¥4,050 (有機JAS米)

<アメリカ、フィラデルフィア>       <札幌>

田牧米ゴールド(コシヒカリ):¥4,409 vs. 新潟産コシヒカリ: ¥4,380
かがやき(コシヒカリ)    :¥3,656 vs. 茨城産コシヒカリ: ¥3,980
かがやき(コシヒカリ)     :¥3,656 vs. 北海道産ほしのゆめ:¥3,250
国宝ローズ(中粒種改良米):¥1,864 vs. 比較対象となる中粒種無し


丁寧に生産された日本元来種の良食味米は、どこで生産されようと、
労働賃金や生産方式(労働集約か資本集約か)が違うにもかかわらず、
最終消費者価格・店頭価格は、結構似かよったものになっています。
こういった現象には、当該コメ商品価格に対するターゲット顧客の所得
水準が関連してきますが、そういった意味では、フィラデルフィア、札幌、
北京の顧客は似かよっているのかもしれません。しかし、北京新光天地
でこのタイプのお米を買う顧客が、相対的な意味では、もっとも懐に余
裕があるようにも見受けられます。

以上のような消費者価格・店頭価格の状況を踏まえて、日本の安心な
良食味米が中国に浸透していく環境条件を大雑把に考えてみると、

(1)中国の富裕層をターゲットに、
(2)年間輸出量は最大70~80万トンで、
(3)日本からの積み出し価格が10,000円(60kg)を少し上回るくらい

ということになります。

とすると、枠内1%の輸入関税(輸入割当枠を持っている商社などを通し
た場合は1%、ただし、そうでない場合は65%ととても高率のようですが)
と13%の付加価値税と、それから中国国内の流通コストを上乗せしても、
中国産「コシヒカリ」や「あきたこまち」の高級品クラスとは価格的にも
十分競合が出来るかなと思います。同時に、輸入割当枠を持っている
商社は、そうではないチャネルを使った場合に必要となる65%輸入関税
をちらつかせて、したたかな率の流通マージンを要求してくるだろうな、
などということも結構気になりますが、ここではその方面の議論には入り
ません。

以上、お米の自由化に関連して、鳥の眼(生産&輸出入統計データな
ど)と虫の眼(実際の各地の消費者価格など)の両方から、個人的に
可能な範囲で、いくつかの状況を確かめておきたいと思ったので走り
ながらまとめてみました。

◇◇◇

「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと」を書き始める
きっかけは、日本はお米の値段が高いので、国際競争力はまったくなく、
自由化ということになったら海外から安いジャポニカ米が大量に入って
きて日本のコメ農業は壊滅状態になるという意見への違和感からでした。

「世界のコメ商品一般」と「世界のコメ顧客一般」という切り口で議論す
ると、その意見はもっともで、なぜなら世界のコメ一般の取引価格・卸売
価格は60kgあたり約3,000円、日本の米価は60kgあたり約15,000円な
ので、価格差は5倍だからです。

しかし、切り口を変えて、世界のコメ生産量の15%程度であるジャポニカ
種の、その中の短粒種の、その中の味と品質のよいおコメという風に
商品のセグメントを絞り込んでいき、また消費者もそういう付加価値商
品を好む人たちからなるセグメントという形で顧客セグメントを絞り込ん
でいくと、そこにあるのは、コメのニッチ市場です。

で、このニッチ市場は実際はどんな様子なのだろうかということが気に
なり始め、以前、カリフォルニアに赴任していたときに自宅でよく食べた
「田牧米」を手がかりに調べてみるかという心境になったわけです。ア
メリカ産のコシヒカリやあきたこまちの現地での消費者価格は、日本産
のコシヒカリやあきたこまちの日本での消費者価格とどれくらい違うの
か、どれくらい安いのか、それとも逆に高いのか、あと、中国が東北地
方でコシヒカリやあきたこまちを商用ベースで国内生産していると聞い
ているので、こちらもそれらの消費者価格は北京や上海ではどうなの
か。各国でのコメ一般の取引価格・卸売価格やタイ・インディカ米の標
準的な輸出価格などを基準にするのではなく、消費者価格という虫の
眼で、ある程度状況を追いかけてみようというわけです。

このニッチ市場の大きさですが、日本の800万トン(これは、前述のよう
に世界コメ市場の1.8%)、これにアメリカの65万トン~98万トン(アメリカの
コメ生産量の1%~1.5%がコシヒカリやあきたこまちといった短粒種良食味
米)、そして、中国の78万トン(この数字は僕の個人仮説)をくわえると、
943万トン~976万トン、ざっと1,000万トン。世界コメ市場の2.3%です。現
在の消費者価格に地域的な差があまりないこと(コシヒカリやあきたこ
まちの消費者価格はフィラデルフィアでも札幌でも北京でもそれほど変
わらない)を考慮すると、この高付加価値米ニッチ市場は、コメ市場
一般とは別の需要供給&価格決定メカニズムで、現在も動いているし、
今後も動いていくように思います。

北海道ではコシヒカリに匹敵する良食味米の「ゆめぴりか」というお米を、
2009年秋にある程度の量で、北海道の新しいフラグシップ(旗艦)米と
して出荷する予定でしたが、夏の長雨の影響で出荷量が激減しました。
予定の6%です。物理的な収穫も予定より少なかったのですが、「ゆめぴ
りか」のブランド品質基準に達しない「ゆめぴりか」が結構あり、それは
「ゆめぴりか」以外のグレードの下がった無名のブレンド米ということに
なりました。これは一例ですが、日本のコメ作りはこういう形で営まれて
います。おそらくカリフォルニアの「田牧米」もそうだと思うのですが、こう
いった品質特性を持った商品がこのニッチ市場を形成しています。した
がって、日本が「10,000円」対応のコメ生産基盤に移行できれば、自由
化を恐れる必要もないし、逆にその後、たとえば中国の特定消費者セグ
メントのコメ需給が逼迫することが予想されるので、定常化したコメ輸出
ビジネスも視野に入ってくると考えています。

(以上)

(初春 2010)


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わがままな消費者

付加価値のある、つまり丁寧に手をかけて作られた食味のよい農産物
や水産・畜産加工食品などは値段が高いのがあたりまえなので、喜ん
でその高い値段で購入するし、付加価値に対する追加的な支払いをす
ることでそうした食べものを生産・製造している人々が事業を問題なく
続けられるように応援する人たちがいます。同時に、そういう人たちとは
別に、いわばその反対側にかたまっている人たちもいます。後者の、反
対側にかたまっている人たちを、ここではわがままな消費者と呼びます。

消費者をタイプ別・類型別に分けて市場戦略・商品戦略・販売戦略を考
えるというのは、マーケティングが能くするところですが、食べものの消
費者分類に関して以下に引用するもの以上の見事な分類は、寡聞にし
て知りません。食べ物に関しては、建前と本音が乖離している、アンケ
ートや市場調査を通した消費者の「公的な」発言と日々の購買行動を通
して見られる消費者の「私的な」意思決定に大きな不一致が見られると
はよく言われることですし、そういう調査結果も目にします。

たいていの人は消費者(買う側)であると同時に生産者や流通業者(作
る側、流通させる側)です。薄型テレビを設計・製造・販売している方々
は、薄型テレビに関しては作る側・流通させる側ですが、その他の電気
製品や衣類や自動車や食べ物(食材・食品)、あるいは散髪やレストラ
ンなどの各種サービスに関しては買う側に回ります。だから、提供する
側から見た消費者のわがままというものに提供する側のそういう立場の
人は気づくと思いますし、買う側に立ったときの消費者としてのわがまま
も、自身の購買行動を通して自覚しようと思えば自覚できるはずです。
「今は買うだけ」という立場の方(お年寄りや専業主婦)も多数いらっしゃ
いますが、以前の経験を思い起こせば両方を理解することはたいして
難しいことではありません。

その見事な分類とは、福岡都市科学研究所(現在は、福岡アジア都市
研究所)が行った「福岡市民の食生活に関するアンケート」(2003年:
徳野貞雄熊本大学教授が監修)で、徳野教授の著書からその調査結
果の要約(「農産物消費者の4類型」)を引用します。(なお、以下の図
ではごくわずかですが、表現をオリジナルより温和なものにかえてある
ところがありますので、お断りしておきます。)

注目したいのは、農業や農作物の価値がわかり、あるいはよくはわから
ないのだけれどもなんとなく感覚的に納得し、付加価値のついた農作物
に対してはプレミアム価格を支払う人の割合がとても少ないことです。つ
まり、無農薬や有機栽培などで育てた農作物はおいしくて安心だが、そ
のために農家や農業法人は相当の手間ひまをかけており、だから値段
が高いのは当然だとその内容を理解し、その理解と財布からお金を取り
出す行動がとぎれない流れになっている人たちは5.4%、無農薬栽培や
有機栽培の内容やそのプロセスはよくわからないが、そうして育てられ
た野菜や米はたしかに甘いし瑞々しいし味も深くておいしいので、なるほ
どと納得してその付加価値にお金を払う人たちが16.5%、合わせて22%で
す。



次に注目したいのが、市場の中心勢力(中心セグメント)となっている消
費者層です。52%~53%の人たちがここに分類されています。市場の売
れ筋商品や売れ筋価格は、基本的にこの人たちによって決定されます。
この層の興味深い特質のひとつは、「アンケート調査等では『食の安全
が一番』『地産地消が大切』と答えるが、実際の消費行動では、スーパ
ーの外国産特売品に飛びつく」ということです。つまり、「意識と行動が
分離しており」おそらくその結果「風評被害を起こしやすい」人たちのよう
です。風評被害を起こしやすいとは、ある商品やその関連商品が風評
被害をこうむった場合、自身がその風評の正義感あふれる、そしておそ
らくその自覚のない仕掛け人のひとりになるということです。読者の皆さ
んの中には、食べものに限らずさまざまな製品・商品の品質問題などで
顧客に頭を深く下げた経験のある方がおおぜいいらっしゃると思います
が、目の前で度を過ぎた正義感を振り回されるのは、あまりいい気分の
ものではありません。最初に述べたように、この人たちを、ここではわが
ままな消費者と呼んでいます。

23%をしめる「食に対して無関心な消費者層」は、食べものに無関心で、
おなかがいっぱいになれば何でもいいわけですから、53%を占める「分裂
型消費者層」が作り出したトレンドに引きずられて、おそらくはそのトレンド
をより太いものにします。

僕は、性格がよくないのか、夕方にデパ地下やスーパーなどへ行く用事
のある折には、食品売り場で買い物籠を手に提げたり台車に載せた熟年
後期の女性や熟年前期の女性、アラウンドフォーティーの女性やアラウン
ドサーティーの女性、あるいは仕事を始めたばかりの年齢の女性を、この
女性たちはどの類型の方たちだろうとその購買行動を、決して失礼にな
らないように離れたところから拝見する場合があります。野菜の選択の様
子や、加工食品のパッケージを裏返して原材料などを確かめているかどう
かが興味の対象です。(ひょっとして、怪しげなオジサンだと警戒されたか
もしれませんが。)

スーパーの一部やデパ地下だと、たいていは野菜売り場の一角に有機
野菜・特別栽培野菜や無農薬野菜のコーナーが設けられています。そ
こで立ち止まってそのコーナーの野菜を買い物籠に入れる女性の数は、
福岡都市科学研究所の農産物消費者分類比率の正しさを物語っている
ようですし、また、加工食品のパッケージ裏面には原材料と食品添加物
がそれぞれ重量の多い順に記載されていますが、パッケージをひっくり
返す女性の数もとても少なく、その分類比率の妥当性を裏書きしている
ようです。

もっとも、食品添加物などまったく入っていないから必ずおいしいというわ
けではないのが悩ましいところで、これは、僕自身の経験ですが、添加
物なしの魚の練り物や北海道産の小麦を100%使った無添加パンでひ
どい目にあったことがあります。控えめに言って、おいしくないのです。
意地になって食べてしまいますが、再び買いたいとは思いません。こうい
う場合の僕は、結果としては、分類とは違った意味でわがままな消費者
になっているようです。

ある施設や活動が休止や廃止に追い込まれそうになると、ないしはそうい
う決定が下されると急に廃止反対の声が上がることがあります。ありてい
に言えば、あるデパートが具合が悪くなっていくつかの支店を閉鎖するよ
うな場合、急に閉鎖反対、みんなで支援のために買い物をしようといった
風がおこることがありますが、そういうのを目にすると、僕はそこには消費
者としてのわがままが漂っているだけのようなちょっとしらけた気分になり
ます。それほど大事なものなら、今までどうしてサポート(つまり、そこで売
っている商品に対してお金を使うことですが)しなかったのか。

どういうものにお金を振り向けるかは難しい問題です。食費を削ってでも
本を買うという若い学究もいると思いますし、食事はカップラーメンだけで
給料の大半は車や輸入物スーツに消えるという若い人たちもまだ残って
いるかもしれません。各家庭だと、食べもののエンゲル係数をどこまで高
めるか、食材の構成をどうするか、食べものの中身をどうするか、家電や
車や衣類や教育や娯楽への出費と食べものへの出費をどうバランスさせ
るかが家計の優先順位を考える際の内容ですし、日本全体だと、農水畜
産業と工業とサービス業に対する資本投資や政府支出をどういう割合で
割り振るかが、今後の納得できる経済成長率や食料自給率・穀物自給
率をにらんだ、優先順位論争の内容になります。

我が家の支出優先順位の1位はここ10年くらいは食べものです。食べも
のとは、レストランなどでのグルメ食事ではなく、家庭で満足感のあるお
いしいご飯を食べるための国産の農産物・海産物やその他の食材のこと
です。丁寧に作った塩や酢や醤油や味噌のような基本調味料、僕の好
きな、おでん種や蒲鉾や竹輪のような魚の練り物も含まれます。

日本の農業や日本の食材生産者を応援することによって日本の穀物自
給率や食料自給率を上げることに僕はとても高い優先順位をつけていま
すが、それに個人の立場で何かをしようとすると、最もてっとり早いのは、
上述の4類型だと、右側の2つの類型のどちらかの消費者になることで
す。結局は、国産のもの、国産の付加価値のある食材に対してそれに
ふさわしい額のお金を、可能な範囲で、実際に払うという消費行動でそ
ういう生産者をサポートしていくのが着実です。

(初春 2010) 




お米の輸出

荘子の逍遥遊篇に出てくる巨大な鳥は、荘子が時空を超えて遊ぶ人
ですから、空間だけでなく時間も飛翔できるかもしれません。今回は、
そのとても大きい鳥になったつもりで、近い将来、日本からお米が輸出
されるさまを上空から想像してみようと思います。

◇ ◇ ◇

前回の「地産地消の射程距離」では、地産地消の「地」の範囲について、
日本という広がりを持たせると同時に日本という限定を設けました。とり
あえずは、日本のどこかで作ったものが、生産地および日本の別の地
域で食されたらよい、ただし生産地以外の需要を引き寄せるためには、
日本という広がりの中で求められている基準的な、しかし相当に洗練さ
れたな消費者の舌に訴える必要があるといった内容でした。

世界三大穀物は、その生産量と消費量の多さで、米と小麦とトウモロコ
シですが、その生産量は2008年度では、それぞれ年間、米が4億4千
万トン、小麦が6億8千万トン、トウモロコシが7億8千万トンです。

三大穀物の原産地(発祥の地)は、米(水稲)がヒンドスタン平原(インド、
ガンジス川の流れる平原)か中国は揚子江の中流・下流域、小麦や大
麦、燕麦などの麦類は中近東(メソポタミア)、トウモロコシは中央アメリ
カとされています。食べ物の生産地も、国境の壁を越えて世界中で移動
してきましたが、荘子の鳥になって時間と空間を横切った地産地消の旅
をしてみると、米はインド以東の東南アジア・東アジアでの地産地消穀物、
小麦はカスピ海沿岸くらいまでを含むヨーロッパの地産地消穀物、そして
トウモロコシは南北アメリカの地産地消穀物ということになります。米に
関しては当然だとしても、小麦やトウモロコシに関しても、現在の政治経
済の舞台と同じように、中国とインドが存在感を持った生産地として登場
しています。2国とも広大で気候の多様な風土なので、そういうことが可
能なのでしょう。

FAO(国連食料農業機関)やUSDA(米農務省)の農産物統計を眺め、
気になるところはその一部を組み合わせたり並べ替えたりする作業に
時間をかけていると、風説とは違った光景が見えてくる場合があります。

ここでは、量と仕様(特徴)と価格という工業製品や商品一般を語るとき
に使われる言葉を使って話を進めますが、量とは世界および各国の生
産量や消費量や輸出入量のこと、仕様(特徴)というのは、極めて工業
製品風の言葉ですが、穀物に関していえば食味とか味とかその素材に
ふさわしい伝統的な調理方法とかにかかわる属性のことです。

とても大きな輪ゴムを想定すると両者ともそこに含まれるが、カテゴリー
を少し狭めると別物になってしまうようなものがあります。たとえばオー
トバイと四輪の乗用車です。ともに内燃機関や電池で動く乗り物ですが、
普通はオートバイの欲しい人は四輪乗用車を買いませんし、この場合
は、逆もまた真なりです。だから、よほどの切羽詰った状況でないと、
両者が同時に購入対象になることはなくて、従って通常は、たいして
意味がないので、両者の「価格」比較といった事態は生じません。

お米は、上述したように、ガンジス川の流れるインドの平原か、中国の
揚子江中流・下流域の生まれのようですが、そこからお米自身の環境
適応や人による品種改良などの結果、現在は、インド型(インディカ米)
と日本型(ジャポニカ米)の2種類が存在します。世界的にはインド型が
主流で8割を占めています。日本では日本型のみで、日本型は寒さに
強いタイプです。

日本型は、短い粒(短粒種)で炊いたり蒸したりしてふっくらと粘り気の
ある食感を喩しむことが特徴(仕様)のお米で、日本や朝鮮半島や中
国北部で栽培され、一方、インド型は、細長い形(長粒種)で煮て食べ
ることが多くパサパサした食感が特徴(仕様)のお米で、インドやタイ・
ベトナム、中国南部で栽培されています。同じお米ですが、別の仕様の
別の商品と考えた方がよさそうです。別の範疇の商品なので、切羽詰っ
た場合を除き、通常は競合しませんし代替商品にもなりません。切羽
詰った場合とは、食べるものがないので、ともかく米と名のつくものなら
何でもいいという状況のことですが、少々辛いくらいでは、日本人の舌
に1500年間にわたって刷り込まれてきた「米とはジャポニカ米のこと
である、それ以外は米ではない」というDNAがそう簡単に消えるとは思
われません。これは根の深い堅固な消費者ニーズです。

さて、お米の生産統計、輸出入統計数字に戻ります。統計数字から見
えてくるものを整理すると以下のようになります。

(1) 圧倒的に米の生産量が多いのは、中国、続いてインドです。こ
   の2国で世界の米生産量の53%程度を生み出しています。

(2) 圧倒的に生産量の多い中国とインドですが、輸出という点では、
   中国とインドは、現在は「わずかな」米の輸出国で、輸出比率は
   生産量に対してそれぞれ、1.0%と2.6%です。中国とインドは経済
   発展による都市化(農地の減少や高級品指向)と人口増加で、
   まもなく米の輸入国になると予想されます。日本への米輸出国と
   しての中国とインドの脅威は、量的側面だけからでも、少ない、
   ないしは、消えつつあるといえます。仕様(特徴)の点でも、インド
   のお米はインディカ米、中国のお米の8割はインディカ米、残りの
   2割がジャポニカ米なので仕様面でも競合の脅威は小さいといえ
   そうです。

(3) そもそも、工業製品と違って、食べ物は保存が利かないという
   ことから伝統的に自国消費が基本なので、食べ物の貿易量は
   多くありません。比較的保存の利きやすい穀物でも、小麦の貿
   易比率が18.4%、トウモロコシは10.4%、そしてお米は比率が一番
   少なくて6.7%です。主な輸出国はアメリカを除きほとんどがタイ・
   ベトナム・パキスタンなどのアジア諸国です。輸入国は、少量ずつ
   輸入する国がばらついた状態ですが、フィリピンやバングラデシュ
   やマレーシアのアジア諸国と、イラン・サウジアラビア・イラクのよう
   な中近東の国が目立ちます。つまり、お米は自国で作って自国で
   食べる傾向の強い穀物、あるいは、アジアという範囲内で地産地
   消される度合いの強い穀物だといえます。ちなみに、日本は77万
   トンのミニマムアクセス米輸入のために、EUを1カ国と数えた場合、
   世界第12~13位の米輸入国ですが、中国も食味のよいお米を欲し
   がる富裕層の需要があるのか、あるいは、米の種類によっては
   供給不足がすでに発生しているのか日本の輸入量の半分くらい
   を輸入しています。また、どういう消費者層がどういうニーズを持っ
   ているのか、アメリカも日本のミニマムアクセス米と同程度の量の
   お米を輸入しています。

   (貿易比率とは、蛇足ですが、売る側に立てば自国での消費以外
   の外国へ販売する比率のこと、買う側に立てば自国生産だけでは
   消費がまかないきれない時には不足分を外国から輸入しますが、
   国内消費量に対する輸入量の比率のことです。)

(4) お米に関して、輸出指向が強くて輸出余力の大きい国はタイ・ベト
   ナム・パキスタンおよびアメリカの4カ国で、その輸出量合計は世
   界のお米総生産量の5.1%です。ちなみにタイ・パキスタン・アメリカ
   は生産量の約半分を外国に売り、ベトナムは2割と少しを輸出に振
   り向けています。しかし、ここでも仕様(特徴)面を考慮に入れると、
   これらの諸国のうちジャポニカ米を生産しているのはアメリカ(主に
   カリフォルニア)だけで、それもジャポニカ米の割合は中国と同じで
   国内生産量の2割程度です。タイ・ベトナムやインド・パキスタンの
   米はいわゆるインディカ米なので、それらに対する日本での需要
   は前述の通り、存在しない(あってもエスニック料理にごくわずか)
   と思われます。輸入米の価格を云々する以前の、消費者ニーズが
   不在の状況です。


だとすると、現在、我々が普段食べている「おいしい国産ジャポニカ米」の
それらしい競合相手は、アメリカの西海岸と中国の北部ということになり
ます。

中国は、工業化を軸とした経済膨張の真っ最中で都市化による農地不足
や高級品指向などから国全体が食糧不足・米不足に陥るかもしれません。
そういう状況の中で、相対的に生産量の少ないジャポニカ米を武器とした
日本への輸出攻勢にわざわざ労力を割くとは思われません。食べものに
話題を限定しても、もっと優先順位の高いことがたくさんありそうです。

次に、(日本の75%くらいのお米生産量を誇り、そのうちの半分を輸出し、
同時に生産量の10%を輸入しているという不思議な動きを持つ)アメリカ
ですが、お米生産量の2割を占めるジャポニカ米(中粒種と短粒種)をもっ
と絞り込んでコシヒカリやあきたこまちのような日本人好みの短粒種に
注目してみるとその割合は全体の1.0~1.5%で、ほとんどがカリフォルニア
で作られています。仮にカリフォルニア産のコシヒカリやあきたこまち等が
高い輸入関税などがない状態で低価格を武器に日本市場に進出してき
て日本の消費者がそれに飛びついた場合は、「短期的には」日本のお
米消費量の「1か月分と少し」が「カリフォルニア産の良質ジャポニカ米」に
シェアを奪われることになります。

ところで、「短期的には」とは、ひとつは、そういうことが起これば「中・長
期的には」米国はもっと日本風短粒種にシフトして日本に輸出ドライブをか
けるかもしれないということ、もうひとつは、そういうことになれば、「モノ作
り」の得意な日本人がいくら農業分野といえどもそのままボーとしていると
は考えられず、生産コストを競合的なところまで下げるために「農業インフ
ラ」を急速に変更するであろうことが想定されますが、そういうことが起こ
る前の短期間という意味です。

そういう場合の「国際」競合価格についてボンヤリと考えてみたいのです
が、出発点は60kg(1俵)あたりのお米の落札加重平均価格(指標価格と
も呼ばれていますが、いわゆる米価)です。現在はそれが15,000円くらい
ですが、中国でのジャポニカ良質米の現地価格と日本への輸入価格(関
税前)、カリフォルニアの短粒種(現地栽培のコシヒカリやあきたこまち、お
よび同等品)の現地販売価格と想定輸入価格(関税前)をおおざっぱに計
算したり比較したりしてみると、現在の為替レートだと、国産米価が
10,000円だと競合ができそうです。つまり、33%の価格引下げになります。
ということは、お米の生産にかかわる農業事業者・農業法人はその価格
でも納得できる利益が確保できるまで生産コストや生産コストに含まれて
いる流通コストの圧縮が必要となります。いくつかの公開されている生産
コストの事例分析を眺めると、減価償却費や肥料費・農薬費の占める割
合がとても高いようです。

しかし、いったん、10,000円で利益が出る構造や体質が出来上がれば、
強い生産基盤がひとまず手に入ったということでその後のマクロの事業
展開は楽になりそうです。つまり、お米の輸出が視野に入ってきます。為
替の振れる方向は「円高ドル安」「円安元高」と想定されるのでアメリカの
お米に対応する方が厄介の度合いが増しますが、アメリカに対して防御し
ながら、中国をはじめとする経済発展中のアジア諸国の特定層を当初の
対象にしつつ、国産高品質米の輸出を進めます。輸出を考えるということ
は輸入を考えるということですから、自由化ないし外国から見て納得ので
きる関税でのお米ビジネスを、その動きと同期のとれた一定期間の農家
所得支持政策も踏まえて、考えることになります。

商品作りということに関しては、国によってというか国民によって得手不得
手があるのは間違いありません。商品を「目に見えるもの」と「目に見えな
いもの」に分けてみると、「目に見えるもの」の代表的な例は自動車や家
電製品、「見えないもの」の代表例はコンピュータソフトウェアということにな
りますが、外国と比較という意味では、我々は目に見えるものの方が相対
的に得意のようです。

同様に、商品を作るときにどういう潜在能力をよく使うのか、商品の種類と
潜在的な発想能力との関係という意味で、商品作りのための発想基盤と
いうものを想定し、それを以下のように3種類に分けてみます。

(1) 言語発想の商品作り
(2) 感性発想の商品作り
(3) モノ発想の商品作り

「言語」発想・「メタ言語」発想の身近な例としては、基盤的なコンピュータ
ソフトウェアが該当しますし、「感性」発想の例としては広い意味でのゲー
ム機やゲームソフト、「モノ」発想の商品作りの例として自動車や家電製品
などが挙げられます。どうも、日本人が世界の他の国や他の文化と比べて
相対的に得意な商品作りの発想基盤は「感性」と「モノ」だと言えそうです。

さて、農産物はどの発想の商品作りに近いのか。僕には、「感性」発想の
商品作りと「モノ」発想の商品作りが重なり合ったあたりが農産物を作る場
合の発想の基盤のように感じられます。モノ(たとえば刀や工芸品や工具)
にスピリット(霊的なもの)を見るのは日本人の得意とするところですが、
農業では土や農作物を相手にそうしたものをより強く感じられる国民では
ないかと思っています。その感覚が正しければ、「モノ」発想の電気製品や
基盤部品、「感性」発想の老若男女向けゲームソフトのように、日本のお
米も日本を超えた「地産地消」市場を席巻してもおかしくありません。

◇ ◇ ◇

荘子の巨大な鳥はこうした東アジアの動きを遥か下に眺めながら、ひょっ
として、わざと大きく羽ばたいたりしているのでしょうか。大鵬がいつもより
大きく羽ばたくと、その下の一帯はひどい風の嵐になるでしょうが、それも
次の行動へのいいきっかけかもしれません。

(初春 2010)




地産地消の射程距離

地元のものを地元で食べよう、地のものが体によい、というメッセージ
を漢字四文字でまとめた標語に「地産地消」と「身土不二」があります。

「地産地消」は、最近の造語で、1980年代から官公庁も含んだ農業関
係者の間で自然発生的に広まっていったようですし、「身土不二」自体
は古い言葉ですが、地元の旬の食材や伝統食が身体に良いという意
味で使われるようになったのは、大正時代の日本の、食に関する啓蒙
運動からだそうです。

素朴な疑問とそれに対する私的な考えから始めたいと思いますが、
最初の疑問は、「地」とか「土」はどの範囲を指すのだろうかということ
です。

僕は今、札幌に住んでいるので、「地」の範囲を身近なものから段々と
距離の遠いものに膨らませていくと、それは、札幌、道央(北海道の中
央部分)、北海道、東日本、日本、東アジア、アジア、世界(グローバル
市場という意味での)まで達します。

魚や野菜など新鮮なうちに食べるものは、食べものの鮮度の保存技
術や梱包・運搬技術(ここではまとめて流通技術と呼びます)が発達
する以前は、放っておいても地産地消になります。傷んでしまうので
「地」の外に出られないからです。酢で締めても「鯖を読む」くらいの旅
しかできません。干物や塩蔵にすれば距離は伸びます。味噌のような
発酵食品は保存が利きますが、基本は地元の味で、どこか遠いところ
に売り出すためのものではなかったと思います。

今は、食べものは、流通技術のおかげで日本中をどんどんと旅をしてい
ますから、以下のような「地産、地域外消費」は日常の光景となってい
ます。フードマイレージを懸念される方もいらっしゃると思いますが、日
本国内に関しては僕は気にしません。

北海道で獲れたホッケやニシンやサンマを北海道で食べる。北海道・
利尻産の昆布を京都で使う。小樽の魚の練り物を札幌で食べる。小
田原の蒲鉾を札幌で食べる。北海道のバターを鹿児島で食べる。新
潟・南魚沼産のとてもおいしいコシヒカリを札幌で食べる。北海道・蘭
越産の元気な無農薬野菜を東京で食べる。愛知・渥美半島産の青々
したセロリーを北海道で食べる。徳島の和三盆(砂糖)を京都で使う。

僕の「地産地消」の好ましいイメージは、楕円形が、ある場所からゆら
ゆらと、片方向に、あるいは両方向に大きく広がるようなイメージで
「地消」の範囲が、途中に人気の出ない地域もはさまると思いますが、
日本全体にまで拡大していくというものです。北海道を例にとると、北
海道の農産物や海産物、畜産物や加工食品がまず北海道で賞味さ
れ、それから「地消」の「地」が段々と大きくなって、東京や関西や四
国や九州に拡がっていくイメージです。また、世界の食糧需給状況に
よりますが、日本では全部を消費できない種類の国産の食べものに
対して海外からの需要が出てきて、楕円が海を超えてゆるりと伸びて
ゆけば、これは、なお、結構です。

さて「地産地消」に関する次の疑問は、「地産地消」は食べものを育て
るのかどうか、についてです。

日本国内の話にとどめますが、地産地消が食べもののレベルを育てる
場合と、阻害する場合の両方があるようです。食材や加工食品の味や
質は消費者や加工業者や流通業者の影響を受けて変化します。うるさ
い消費者に鍛えられてレベルアップする場合と、素直な消費者需要に
率直に応えているとそこそこにビジネスが成り立つのでそれ以上に商
品をレベルアップするきっかけを見失い、気がついたら他の地域の同
業者よりもレベルダウンしているような逆の場合です。

これは「地消」の「地」の範囲をどこまで広げて考えるかによります。
「地」の範囲が狭い場合、地元の消費者がうるさ型で、買う側と作る側
が鍛えあって、食材や食品の強さや洗練がその度合いを増す場合だ
といいのですが、地元の消費者がそうでない場合は、「地元では人気
のある食べもの」以上の存在にはならないようです。

狭い意味ではまったく地産地消でない、つまり獲れるが食べない食材
の代表例が北海道の昆布です。北陸や関西など北海道以外の消費者
と加工業者の需要と嗜好に強引に引っ張られて洗練され成長したのが
北海道の昆布事業です。だから、広い意味では、みごとな地産地消で
す。昆布ほどではありませんが、「たらこ」と「辛子明太子」の関係もいく
ぶんそれに似ています。

地産地消として狭い範囲ではうまく回転しているのだけれども、北海道
育ちでない舌の持ち主には満足感を与えないといった食品も結構見受
けられます。あと少し洗練を加えたら「地消」の範囲が拡大するのに、つ
まりもっと売れるのにと、とても、もったいない気がします。語弊があるか
もしれませんが、日常食品であるにもかかわらず、みやげ物の匂いが
残っています。だから、近所の人と旅行者が主な購入者です。広義の
「地産地消」を実現している強い食材や食品は、その産地を旅行した時
にはみやげ物として旅行者が自宅や知り合いに宅配するのはもちろん
のこと、同時に日常の流通経路を持っています。しかし、もともとお土産
的・地域限定的な位置づけのものなら、そういう位置づけで成功してい
る商品もあるので、この僕の要望は、ないものねだり、ないしは、おせっ
かいということになります。それにしても、近所で地元産のものを買いた
いのに、味や食感にどうも満足できずに、競合品を宅急便で遠くから
「お取り寄せ」というくらいバカバカしいことはありません。

東京から札幌まで新幹線が延伸されると、新幹線の便利さをよく知って
いる僕にはうれしい限りですが、札幌にも新幹線に乗ったことのない人
たちがそれなりにいて、だから新幹線の話をしても会話が成立しません。
実際に乗ってみれば、そのよさが実感されると思うのですが、なかなか
僕の「利用者ニーズ」「消費者ニーズ」が伝わりません。

新幹線ではありませんが、ひょっとして見落としているかもしれない基
本的なニーズに接触し、その後「地産地消」商品に戻れば、もっと射程
距離の長い、もっと売れる商品に成長していくと思われます。

(初春 2010)



高いお米、安いご飯

お米は高いのか安いのか、どのくらいの値段が妥当なのだろう
か、考えてみました。

ある商品の購入量は、消費者が置かれている経済環境と、この
商品だったらこれくらいの値段までは高くなっても特には気にし
ないという消費者のお値段感覚と、代替品(たとえば、珈琲に対
して紅茶)との価格差や両者の相対的な価格比で決まってきま
す。

以前から、お米の値段が下がればお米の需要が増えるというス
トレートな意見があり、それについてとくに異議を唱える人もいな
いようですが、僕は、僕自身の「虫の眼」感覚からそのような意
見に違和感を覚えていました。

パン食等の食生活の洋風化で日本のお米に対する需要が減少
したのは事実だとしても、これほどお米の需要が減少したのは、
日本のお米の値段が高かったからだ・高いからだ、というもので
す。だから、米価を下げたら、お米の需要は増大する、と続きま
す。

お米の値段が政策的に高価格に維持されてきたために、農地
規模をどうするかという政策を含む農業生産インフラの性格が、
対消費という意味ではボンヤリとしていました。その結果、食べ
物の消費スタイルの変化に追いつけなくて、あるいは置いてき
ぼりにされて、そのような農業生産インフラが日本の食糧自給
率の低下を招いたというのはその通りだと思います。しかし、お
米の値段を下げたら、主食としてのお米の需要が増えるというの
は、他に何か大きな状況の変化がない限りありえないのではな
いか、と感じています。何か大きな状況の変化とは、たとえば、
小麦の値段が急騰して高止まりするとか、お米パスタやお米パ
ンのような小麦の代替としてお米を使う食品が人気を得て急速
に市場に浸透していくといったことです。


お米の価格に関して気がつくことをいくつか並べてみます。

(1)普段、僕たちが家庭で食べているお米の値段が20%安くな
っても、毎日食べるご飯の量が20%増えることはない。お米を食
べる量はほとんど変わらない。

(2)高品質の有機栽培米や高級ブランド米は価格が下がれば
需要は拡大するが、それは新規顧客需要であり、そちらに引き
寄せられた消費者は今まで食べていたお米から乗り換えるだけ
なので、全体の需要量は変化しない。ただし、販売者は、顧客に
人気の高い付加価値米の値段をわざわざ下げるなどという自己
否定的なことは普通はしない。

(3)お米の需要量が変化するとしたら、お米の値段が今の倍に
なって高すぎるのでお米を食べなくなるとか、パンやパスタや
うどんなどの小麦関連食品の値段が倍になって小麦離れを起
こし、逆にお米をどんどん食べ始めるとか、という場合である。

(4)お米の値段は、高くて、同時に安い。国産のお米の値段は、
他の国のお米の値段よりも、数10%か、あるいは何倍も高い。
しかし、代替品・代替食品の値段とはあまり差がないか、代替
品よりも安い。


上述を踏まえて、以下の3つを考えます。

(A) 日本の米の値段は、世界で一番高い。
(B) 材料としての米は小麦より高いが、小麦粉と比べると
   実質的な差は少ない。
(C) ご飯は、小麦加工食材・食品よりも、安い。



(A) 日本の米の値段は、世界で一番高い。

日本のお米の60キログラム(1俵)あたりの平均的な落札価格
(指標価格、いわゆる米価)は1万5000円くらいですが、他の
国の種類の違うお米(たとえばタイの一般的な米)の値段は
3550円~4150円(タイ輸出価格 に輸入関連費用をおおまかに
加算したもの、註②参照)くらいで、とても安いです。しかし、他
の国の、似たような品質のお米(たとえば中国産の良質米)は、
今は高くなって、その輸入価格(関税前)は1万円くらいです。
(現地取材レポートなどによれば、中国産良質米の中国国内で
の消費者価格が邦貨換算で8000円から9000円。)

タイのお米をインディカ米とすると、食味や調理方法の違いで
通常は競合品にはならないので、その価格はとても食べ物に
困ったときの参考にはなりますが、現実的な価格比較には、
中国良質米の1万円と国内米の1万5000円を比べる方が妥当
です。

ちなみに、1万5000円(60kgあたり)とは指標価格なので、スー
パーなどでの消費者向け店頭価格は、おいしいといわれるお米
が10キログラム袋で4000円から4500円くらいです。


(B) 材料としての米は小麦より高いが、小麦粉と比べると
   実質的な差は少ない。


次に、パンやうどんの原料、パスタやラーメンの原料である「小
麦」と比較してみます。原料としての小麦は、ほとんどが輸入品
ですが、最近の政府売り渡し価格を見ると(比較をわかりやすく
するために60キログラムあた りに換算)パンやラーメンやお菓
子用の平均値が3885円です。安いです。しかし、「小麦」では
なく、「小麦粉」の実勢取引価格(卸売価格)を見ると、これも60
キログラム換算で、最近は、パスタ用や中華麺用やうどん用や
菓子用の単純平均値が1万円です。この方が比較の対象として
は適切かもしれません。小麦粉が1万円、米が1万5000円、で
す。

お米は炊飯器で米磨ぎなどの準備も入れて1時間ほどでご飯
が炊き上がりますが、小麦粉を買ってきても、自家製パンや自
家製パスタや自家製麺は1時間くらいではでき上がりません。
我が家では、最近はパンやパイくらいしか作りませんが、以前
はパスタ作りの手伝いをさせられたこともあって、米磨ぎと、た
とえば生スパゲティー制作とでは、手間ひまがうんざりするくら
い違います。生パスタが完成した段階と、米磨ぎが終わった段
階がいわば同じスタートラインなので、それまでの作業時間を
考えると両者の実質的な価格差は縮小するということになりま
す。

もっとも最近は、パスタをこねる機械やホームベーカリーがある
ので、材料価格差はそれなりにあるというにとどめておきます。


(C)ご飯は、小麦加工食材・食品よりも、安い。

今度は、材料比較ではなく、小麦加工食品とお米との比較です
が、小麦加工食品とは、パスタやラーメンやうどん等を指します。
消費者向けにパッケージされた白米は、「磨いで浸して炊飯器」
という簡単プロセスでご飯になるので半ば加工食品ですし、無
洗米になると、値段は若干高くなりますが、米磨ぎが不要なの
でお米は、湯に入れる前の乾燥パスタ・乾麺とほぼ同じ状態で
す。

そのままむしゃむしゃと食べられる主食系の小麦加工食品の代
表はパンです。パンは食べられるまでの準備作業がないので、
その分だけ値段が高くてもフェアな価格付けといえそうですが、
パン価格は、パンにもいろいろありますが、その差額分を越え
た高い値札をつけているようです。

そのままむしゃむしゃということなら、おにぎりはパンのようなも
のだともいえます。コンビニのおにぎりがよく売れるのはそのた
めだと思います。我が家でも、僕の朝があわただしいときには、
前の晩のご飯の残りでおにぎりを作り置きしてもらい、それと
味噌汁類や冬だとケンチン汁で朝ごはんです。おいしいお米は
冷えてもおいしくいただけます。


以下は、100グラム単位の価格比較表です。(価格は、某巨大
スーパーでの2009年11月下旬の店頭価格で、場所は札幌で
す。)

なぜ、100グラムか。

100グラムのお米は丼一杯分のご飯になり、うどんやスパゲテ
ィーは100グラムが、大人一食分の分量なので、100グラムで
お互いの値段を比較することは極めて公平です。もっとも、両
方とも、それだけでは味気ない ので、素うどんといえどもおいし
いダシ汁やネギが必要ですし、パスタにはそれなりのパートナ
ー素材、ご飯にもオカズが不可欠ですが。




さて、僕の米価に関する考えを要約すると以下のようになります。

*1万5000円のお米の指標価格(米価)に、消費者としては、不
満はありません。(ただし、今は、ひどい不況のデフレ状態なので、
全般的な物価の下落に対応という意味での価格の低下は歓迎し
ます。)

*不満のない理由は、ご飯の値段は、パスタ、うどん、ラーメン、
パンなどの小麦加工品よりも相対的に安いからです。

*お米の値段(だけ)が下がったからといって、日本人の主食の
ひとつとしてのお米の需要がみんなが気づくほど増えるわけでは
ありません。しかし、お米パスタやお米パンのような小麦の代替と
してお米を使う食品が人気を得て市場浸透する場合は、お米の
需要は明らかに増えます。

しかし、以下の理由で、お米の値段(いわゆる米価)は1万円以下
になってほしいと考えています。

*まず、農地の問題。農地面積、農耕地の広さが、農作物の収穫
量を決定します。今まで、「高すぎる生産費」と「高すぎる米価」の
組み合わせから、減反という不思議な政策を通して、日本の農地
は50年前の約610万ヘクタールから約460万ヘクタールへと減少し
ました(その内訳は、水田が250万ヘクタール、畑が210万ヘクター
ルです)。現在の日本の食糧自給率40%~41%を100%にするために
は、今ある農地を4倍にしなければならないといわれています。
(註①)

*WTOに代表される、外国との自由貿易・関税交渉の問題があり
ます。WTO で割当てられているミニマムアクセス米などの食糧自
給を阻害する要素を取り除くためには、日本で好まれる種類と質の
お米(良質ジャポニカ米)に関して、外国商品との競合的な価格、
つまり1万円以下にまで国内米価を下げる必要がありそうです。
日本で人気のないタイプの外国産のお米についてはその価格差
は気にする必要はないと思っています。なお、ミニマムアクセス米
として現在受け入れている数量は年間77万トンで、2009年度のお
米の年間国内生産量が847万トンと見積もられているので、その
9%に相当します。

*農地の確保、農地の拡大のために1万円の競合的な米価が必
要なら、それを推進する政策に賛成です。

*そうなれば、食糧安全保障の基盤整備につながりますし、穀物
価格とアジアの食糧需給の状況によっては、その価格で、特定国
に向けた輸出が可能になるかもしれません。

*農家が自身の労務費や地代も含んだいわば総生産費用が
8000円~8500円なら、米価が1万円でも経常利益が15~20%にな
り、中国産良質米の輸入価格と問題なく競合できることになりま
す。そしてある程度の事業規模・収穫規模が見込めるなら、そう
いう農業に専業・主業として取り組む農家には、短期間は政策的
な後押しが必要かもしれませんが、事業継続・事業拡大のための
十分な利益が残ります。そうなれば、流通マージンもその動きに
同期して、今よりもスリムなものになっていると思われます。しか
し、そういう風にできない農家は、この価格構造の中では、農業
部分の継続がむつかしいかもしれません。

*しかし、その場合でも、現在がそうであるように、高品質の有
機栽培米や高食味米は高価格が維持できます。それらを好むお
客がいるからです。我が家は、有機玄米を常食にしていますが、
納得する付加価値に対しては喜んでプレミアムを支払います。

―――――――――――――――――――――――――――――

註①


僕たちが穀類しか食べないとすると、日本の食糧自給率は28%
程度になりますが、実際は国産の鶏肉や豚肉や牛肉やミルクや
バターや魚や野菜も食べます。そして肉類はカロリーが高いの
で、カロリーベースの食糧自給率は2008年で41%ということになり
ます。仮に農耕地が現在の4倍になって、小麦や大豆やトウモロ
コシがほとんど国内生産されるとすると日本の食糧自給率は
100%を超えますし、また仮に、お米が鶏や豚や牛の飼料として大
量に使われて、飼料用としての輸入トウモロコシや各種の輸入麦
の需要を相当な部分置き換えると、カロリーベースの食糧自給率
は100%に近いものになります。

註② タイとベトナムは、国際市場における米の価格を安定させ、
両国の米の競争力を高めるために、品質が高い、白いお米に対
する輸出適正価格は、1トン当たり約600米国ドル~約700米国
ドルであるという見解を今年の2月に発表しているので、それに
準拠。

―――――――――――――――――――――――――――――
(新春 2010)




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